第57話 一行怪談57

 この廃墟のトイレからは踏切の警笛と激しい衝突音が、風呂場からは車のクラクションと絶叫が、子ども部屋からは肉が焼ける音と断末魔が夜ごと響き渡るが、この廃墟の持ち主の家族は数年前に大量の血痕を残して行方不明になっていて、関連性は不明だ。


 十月を過ぎても近所の公園の木にはセミがびっしりと貼り付いており、鳴き声を響き渡らせている。


 ポップコーンの匂いがするから味もそうかと思ったが違った、肉球ってそんなに美味しくない。


 満月の日には会えない彼の家を尋ねたのが間違いだったと、獣の姿になった彼に喉元を食い破られている今思う。


 夫は義母が大好きで仕方ないので義母の肉で作ったハンバーグを作ったのに、泣き止まないのはなぜだろう。


 妻の遺影が日に日に年老いていくにつれて私はどんどん若返り、今では小学生のような姿になってしまった。


「パパ、おばけはいなくなった?」と尋ねる娘に斧を振り上げるが、私はいつになれば娘を殺す夢から覚めるのだろう。


 人の家に上がり込んだ不届き者どもの首をはね、やれやれと肩をすくめた私は夜の闇に消えていった。


 私の顔をじっと見つめた息子が「ママ」と私の顔を指さすと、私の目の奥から「なーに?」という声が響いた。


 友人から勧められたテレビ番組を見ていると、「今日の景品はこちらです」とくだんの友人が台に縛り付けられた状態で解体されている場面が流れた。 

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