第36話 一行怪談36

 年は明けたがいつまで経っても日は上らず、時計も0:00を示したままだ。


 手の平がやけに痛むので見てみると、手の平の真ん中が裂け鋭い牙が覗いていた。


 ある友だちと電話している間、友だちの声に被せるように女の低い声が恨み言を言っている。


 知らない男の頭を湯船に押さえつけていた夢を見てしまい気分転換にシャワーを浴びようとすると、湯船いっぱいに髪の毛が溢れていた。


 私が見る映画のエンドロールには必ず、死んだ曾祖父の名前が書かれている。


 冷蔵庫に入れていたプリンが空になっていて息子のイタズラだと気づき、仏壇に飾った息子の写真を見てため息をついた。


 泣きじゃくる姉の頭から生えた百合がしおれていたので、次に死ぬのは家族の誰なのかと身震いする。


 雪の上にぼんやりと見える人影は、肉片をそこら中に飛び散らせながらゆっくりとこちらに近付いてくる。


 携帯の待ち受けが毎日勝手に変えられるのだが、その待ち受け画面は朽ちていく死体の写真で、一年前に行方不明になった兄に似ている。


 血がついた私のピアスがかつての恋人の家のあちこちで見つかるそうだが、私は彼の前でそのピアスをつけたことはない。

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