第33話 一行怪談33

 誕生日には毎年、「今年も運がよかったですね」という血文字の手紙が送られる。


 友人はなぜかまだ赤ん坊の自分の子の頭に、犬の剥製の頭部を被せている。


 ある日を境に、頭に何本もの釘が刺さった男につきまとわれるようになった。


 息子の腹がよく鳴るので服をめくると、息子の腹一面に無数の虫がびっしりとくっつき泣き声を上げていた。


 うちのテレビは夜中、砂嵐ではなく髪の長い女がうなだれて呪詛を吐き続ける映像が流れる。


 道端でうずくまる少年に声をかけた時、立ち上がった彼の体が半透明なことに気づくべきだった。


 大切なものを全て失った彼は今、復讐相手の子どもの頭を抱えて雑踏を歩いている。


 我が家のインターホンの音は、掠れた女の「今からいきます」という音声なのだが、数年前に新しいものに取り替えても、同じ女の声が鳴る。


 酒を飲むたびに、視界の端にニヤリと笑う少女が映るのはなぜだろう。


 この日常がいつまでも続くなんて、そもそもこの日常が現実かどうか分からないのに。

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