第27話 一行怪談27

 「空を見上げていた友人が絶叫を上げ目を抉りだしたので何事かと顔を上げると」と話すと、自らの目を潰した男は体を震わせ喉を掻き切ったため、事件は迷宮入りになった。


 もうすぐ三歳になる娘の腕には生まれつき痣があり、その痣がだんだんと私が山に埋めた友人の顔になっていく。


 コーヒーを飲み干したカップの底に書かれていた「やっぱりあなただったのね」という言葉に、過去の罪から逃れられないことを悟った。


 毎夜、私の頭の中でカウントダウンをする私の声が聞こえるが、最後は必ず「一、一、一……」と繰り返して終わる。


 トマトの種が小さな人間に見えて以来、トマトを潰すたびに断末魔が聞こえる。


 頭に釘を刺して以来、弟が快活になったため、釘を抜こうか迷っている。


 心臓が弱い伯父はあるスプラッター映画を見てから、動物を残虐に殺すことで心臓を強くしようとしている。


 路頭に迷った兄は、成仏したい幽霊の願いを叶えることに人生の目標を見つけたが、その兄も数年前に死んでいることをいつ伝えたらいいのだろう。


 泣きじゃくる息子の隣で、妻が狂ったように妻そっくりの女に馬乗りになって首を絞めているが、私はどちらを助ければいいのだろうか。


 体型に悩んでいる姉に話題のサプリを勧めると、一口飲んだだけで目の前でみるみるうちに痩せていき、最終的には骨と皮だけになってしまった。

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