第26話 一行怪談26

 父が私を殴るたび、母の影が薄くなる。


 遺影の中の祖父が、年々若返っていく。


 エアコンから、女性の断末魔が冷風とともに流れてくる。


 外から猫の鳴き声が聞こえるので窓から覗くと、地面に転がっている生首と目が合った。


 私の守護霊は死んだ祖母らしいのだが、なら私の後ろにいる血塗れの若い男は何者だろう。


 泣きじゃくる弟に蝉の死骸を与えると、ゲラゲラ笑いながら頬張り始めた。


 ビールの泡の一つ一つが、私には小さな目に見える。


 枕の下に手を入れると、温かい何かに手を握られた。


 嫌がる私にホラー映画を見せた友人が、翌日私と目が合うと悲鳴を上げて窓から飛び降りたのだが、これで五人目だ。


 兄の婚約者の顔には霞がかかっていてよく見えないのだが、周りの人の話によると、死んだ叔母と瓜二つだそうだ。

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