第16話 一行怪談16
家に帰ると、泥棒と思われる覆面を被った人物が天井の隙間から伸びた黒い腕に首を絞められている場面を目撃した。
我が家のテレビは某人気アイドルグループのメンバーが映る時はいつも、彼らだけモノクロになる。
「ナタデココ」を「鉈でここ」と聞き間違え友人の額を叩き割ったと嬉しそうに話す彼女と、別れるべきか否か。
新人の作家に「作品にひねりがない」などと罵倒していた編集の友人が、両手足と首が雑巾のように180度ひねり上げられた遺体となって発見された。
夕立に降られ雨宿りした軒先で隣になった女が去年他界した妹だと分かった瞬間、俯いていた女がこちらを向いた。
「文字で人は殺せる」と話していた友人はそれを証明するために嫌いな同僚毎日「あなたを呪います」と書いたはがきを送り、同僚の様子が挙動不審になのを嬉しそうに話す。
「暗い、痛い」という声が両親の寝室から聞こえるのでそっと覗くと、両親の腕の肉をかじっている猿のようなものがこちらを見つめ「食らいたい」とはっきり言った。
過激な発言で有名なコメンテーターが嫌いな彼がそのコメンテーターの写真が載った新聞記事をライターで燃やすと、画面の向こうのコメンテーターが全身を炎に包まれた。
夜中にコンビニに買い物に出かけその帰り道、私の後ろをべちゃべちゃという足跡がついてくるので試しに止まると、「もう少しだったのに」という恨めしい声が耳元で聞こえた。
夕焼けの太陽にくっきりと顔があることに気づいてしまい、それから太陽は私と目を合わそうとしてくる。
道端にうずくまる少年に声をかけようと後ろから近付くと、少年は血の滴る牛の生首にぶつぶつと恨み言を話していたため慌てて踵を返した。
鏡の中の私はいつも、手に血塗れの包丁を握っている。
SNSに投稿された動画を何気なく見てみるとただある道を歩いている動画だったがその背景が私が住む町のもので私の家に近付いていると気づいた時、チャイムがなった。
スースーと隣で寝息を立てる妹と、「今すぐ逃げよう」と必死の形相でこちらに手を伸ばす妹とどちらを信じればいいのだろう。
満月が徐々にこちらに近付いていることに気づいた時、舌打ちが聞こえ満月が遠ざかっていく。
通販で買った炊飯器が上手く動かず電話でクレームを入れると、「まず中を大量の血で満たして頂かないと」と申し訳なさそうに言われた。
物置に置いたスーツケースから、「絶対に開けちゃダメ」「開けないと不幸になる」という二つの声が聞こえる。
そうめんとして食卓に出されたものは、どう見ても頭皮がついた髪の毛だ。
スイカを半分に切ると、中身は犬、胎児だった。
物語の中で多くの人を殺めてきた私が、その殺めた人たちに体をバラバラにされて殺されるとは思ってもいなかった。
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