第17話 一行怪談17

 視線を感じるのでふと顔を上げると、天井の隙間から拳大の頭の女がひょっこりと顔を出していた。


 数年前に失踪した婚約者が夢の中で手招きしているのでかつての怒りを思い出し彼を滅多刺しにすると、目が覚めた時に血塗れになって事切れた彼の遺体が私の上に覆いかぶさっていた。


 写真の中の友人とどんな角度でも目が合ってしまう。


 祖父の愛用の杖は夜中、亡くなった曾祖父の声で家族の名前を呼ぶ。


 母方の家系の女性は毎年、近所の神社の神様に生爪を捧げる儀式を行わないといけない。


 友人の彼女が、友人の髪の毛を抜いて藁人形を複数も作っていることを知ってしまった。


 ある日から町を歩くと道行く人がみな私を指さして、ケタケタと笑うようになった。


 友人が母親を亡くした日を境に、手の甲で拍手をするようになった。


 口の悪い弟をたしなめると、「それじゃダメ」と見知らぬ女が弟を抱えて連れ去ってしまった。


 今日も今日とて、風の音があの時の車のブレーキ音と彼の断末魔に聞こえる。

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