第14話 一行怪談14
風呂に入っている時ふと頭上に何かいるのではという想像をしたところ、「はずれ」の声が聞こえたかと思うと湯船から伸びた腕に頭を掴まれた。
刑事ドラマを見ていると、主役の刑事が「犯人はあなたです」と画面の向こうの私を見つめてからもう一時間が経つ。
何気なくゴミ箱の中身を覗くと、捨てたはがきに描かれているイラストの人物がまばたきしているところを見てしまった。
携帯のカメラを通して母を見ると、必ず幼い頃に死んだ叔母の顔になる。
チェーンソーで体を切り刻まれる夢を見てから、人の話し声が全て夢の中の私の断末魔に聞こえる。
彼女の実家に飾られているこけしが黄色い涙を流すと、近所の人間が必ず行方不明になるのは有名な話だ。
とある国に旅行に出かけた友人は、赤子を見るとよだれが止まらないそうだ。
彼と一緒に山に出かけてからというものの、鏡を見るたびに私の背後で美しい女が私を睨みつけている。
幼い頃兄を亡くした祖父は海面に立ちこちらに手を振る人物に手を合わせるが、あれはどう見てもしわくちゃな顔で手招きする老婆にしか見えない。
道行く人がみな私に「おめでとうございます」と耳打ちしてきて怖くなり急いで家に戻ると、「おめでとうございます」と書かれたカードがくくりつけられた姉の生首が玄関に置かれていた。
救急車が燃えさかりながら猛スピードで道路を走っていくのを、ただ呆然と見送るしかできなかった。
パトカーに乗っている警察官がケタケタ笑いながらこちらを見つめ、手の甲同士を叩いて拍手をしている。
父の旅行鞄になぜ死んだ祖母の目玉が入っているのか、詮索してはならない。
ドーンと何かが壁にぶつかる音が両足を骨折した私しかいない部屋で、一時間ごとに響き渡っている。
人が空に吸い込まれる姿を見て以来、重力とは本来逆なのではないかというのは妹の説だ。
ぼんやりとバスの窓から外を眺めているとバスと並走する少年と目が合ってしまい、以来バスに乗っても窓側に目を向けないようにしている。
電車のつり革を掴むと、後で確認すると人の歯形のような痕が手に残った。
弟が作る特製ジュースはとても美味しいのでその秘訣を探ろうとこっそり弟の家を訪ねると、何かの胎児をミキサーにかけているところを目撃してしまった。
叔父夫婦の指になぜ爪がないのかと尋ねると、二人は白目をむいて私の指に噛みついて爪をかじり始めた。
「助けないでください」と何度も呟く老人とすれ違ったので無視すると、「助けないでって言ったのに」と絶叫しながら老人は手に持った肉切り包丁を私に向かって振りかぶった。
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