第13話 一行怪談13

 コンコンというノックの音が窓から鳴り響いているが、窓の外を見ても誰もいない。


 バリバリと何かを噛み砕く音がベッドの下から聞こえるので覗いてみると、見知らぬ男がマネキンの腕を口に咥えていた。


 亡き恋人との思い出の場所へ行きたいと友人が言うので連れて行くとそこは私の実家で、「これで終わりだ」と笑いながら友人は家に火を放ち私の腕を掴んで燃えさかる家に向かって走り出した。


 嫌がる娘に怪談を聞かせると、娘はしわくちゃの老婆の顔になって私が昔犯した罪について話し始めた。


 うなされている母が突如叫び声を上げたかと思うと、見る見るうちに体が縮んでいき小さな赤子になって泣き出した。


 生まれつき私の背中には顔のような痣がありその痣が私の先祖の中の一人の顔と同じだと分かった次の日から、その痣が私たち子孫に対する恨み言を話すようになった。


 最近の私の守護霊の様子がおかしくとうとう消えてしまったので知り合いの霊能者に尋ねると、ニコニコと微笑んだまま何も話さない。


 叔父の仕事を手伝うことになったがその内容は、「廃墟に忍び込んで『これが正解なんだ』と叫ぶ」というものだった。


 同僚の鞄をこっそり覗くと、同僚の頭が入っており目を見開いて「逃げろ」と口パクした。


 上司の幼い息子が苦手だ、幼い頃俺が事故で死なせてしまったあの子と同じ顔で笑いながら「早く楽になりなよ」と囁くから。


 映画館でアクション映画を見ているとあちこちで悲鳴が上がり、上映が終わって周りを見渡すとみんなの頭が切断されていた。


 病気で伏せがちの伯母を見舞いに彼女の家に向かうと、綿がはみ出たクマのぬいぐるみを抱えながら「もうすぐだよ」と血走った目で笑っている伯母がいた。


 父の目に映る私の顔は、いつまで経っても赤ん坊のままだ。


 祖父母の家には離れがあり、その窓の向こうで無音で暴れ回るシルエットの正体が私だと分かった時の私の心境を述べよ。


 弟の手の爪の色は緑で、ある日弟は自室で爪から生えた植物の蔓が首にまとわりついている状態で発見された。


 妹にしつこくつきまとっていた男を捕まえ問い詰めると「危険なのはあなたの方だ」と男が叫び、その時背中に痛みが走ったので後ろを振り返ると狐のように目をつり上げた妹が包丁を再度振りかぶるところだった。


 姉夫婦の車には乗りたくない、クラクションの音が私が山に埋めた女の断末魔にそっくりだから。


 兄は私に対していつも不満しか言わないので文句を言うと、「こうしないとふわり様が来るんだ」と泣きそうな顔になった。


 「口に出して読むと呪われる」という本を購入し音読した次の日、私の世界モノクロで無音になった。


 家の猫が最近口を開くたびに私の寿命をカウントダウンするので、精神が参る。

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