第12話 一行怪談12
私の首には生まれつき誰かに手で掴まれたような痣があるが、ある日その痣と夫の手の大きさが同じなのを知って自らの運命を悟った。
風呂場の鏡を見るといつも、私の手足は一本多く映る。
何の気なしに「誰かいませんか?」と私以外誰もいない部屋に呼びかけると、部屋の内側の四方八方からバンバンと叩く音が鳴り響いた。
実家の犬は私が帰省するたび、数年前に死んだ祖父の顔になって「戻ってくるな」と私に囁く。
嫌がる友人を私の家に連れてくると、途端に笑顔になって「あの人の言うとおりだ」と言って台所に置いていた包丁を振りかぶってきた。
一ヶ月前からベランダから見える彼女は未だに落ちる途中で、今日は昨日より3㎝地面に近付いていた。
どうしても彼の心臓と私の心臓を入れ替えたいと思っている私はおかしいのかと彼に相談すると、「僕も同じ気持ちだよ」と彼は私の胸に包丁を刺した。
新聞のお悔やみ欄に一ヶ月に一度私の家族の名前が載るが全員未だに健在なのでただの嫌がらせかと憤ったが、家族の首が360°回るところを見てしまった。
弟の部屋にある恐竜の人形の歯には時々何かの肉と血がついており、そんな日の翌日町の誰かが足の肉を食い千切られたとニュースになる。
妹のお気に入りのワンピースを着た青い顔の女が妹の部屋でバレエをしていたことを、妹に伝えるべきか否か。
妻は時々誰もいない部屋の隅を見つめては、「こっちに来てタカシさん」と手招きをする。
兄は目の調子が悪いと目をくりぬくが、数時間後には新しい目が眼窩にあるので問題ない。
サイダーを飲もうとするが、炭酸の泡が笑っている小さな生首に見えたために困っている。
眠っている父の鼻の穴から時々見知らぬ男が顔を覗かせているが、特に害はないので放置している。
姉の主食は私が切った爪です。
家の箪笥の引き出しから伸びた腕が、あっちいけというようにこちらに手を振っている。
母はその日の気分で気に入った動物の首をいくつか鞄に入れて、買い物に出かける。
エアコンをつけると知らない女の声で、私の家族構成を延々と告げる声が聞こえる。
息子の膝小僧は時々小さな像の顔になって、私の秘密を楽しそうに話す。
娘の写真を撮ると、いつも私が海に捨てた女が幸せそうな顔で背後から娘の首を絞めている。
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