第6話 一行怪談6

 人魚姫の歌声はとあるオークションに出品され、現在はある貴族の屋敷の一室で哀しい歌を響かせているそうだ。


 アリスがある不思議なケーキを口にすると体は際限なく大きくなり続け、今では地球の大気圏を超えてしまっている。


 シンデレラのガラスの靴が美術館に展示されると聞いて早速向かったが、どうやら私にしか靴が血に染まっていることに気付いていないようだ。


 白雪姫の体にはあの高慢な女王の血が流れていたようだ、魔法の鏡に美しい女として選ばれ処刑台の上にいる私はぼんやりと考える。


 アリとキリギリスの話には続きがあって、キリギリスに食料を与えたけど足りなくなっちゃって結局アリたちがキリギリスの食料になったんだよ。


 眠りの森の美女はね、本当は王子様がキスしたとたんにお姫様は一気に年をとって灰になっちゃったんだよ。


 親指姫はある王子様と結婚したけど、人間の大きさの子供を産むときに腹が破裂して死んでしまったそうだ。


 三匹のコブタは結局仲違いして、長男は結局狼に食べられて次男は川で溺れ死んで三男は人間に捕まって食べられたんだってさ。


 美女と野獣の本当の話はね、ベルと野獣が出会うまでに何人もの女の人が野獣に食べられてしまっていたんだよ。


 アラジンの魔法のランプはランプの精が力を使いすぎた時は、力が無くなる寸前に王国ごとランプが飲み込んで力をどうにか補充してるんだってさ。


 私たち鬼の一族は、鬼ヶ島で鬼を大量虐殺した桃太郎の一族の生き残りを探して殺すための旅を続けています。


 浦島太郎は自分の物だと信じてやまない乙姫は、今でも暗い海の底の朽ち果てた竜宮城で浦島太郎を待ち続けているらしい。


 おむすびころりんすってんてん、落ちてきたおじいさんも食ってしまいましょう。


 舌切り雀の子孫の雀たちは、全員懐に裁縫ばさみを隠し持って人間を襲う日を今か今かと待ち望んでいる。


 かぐや姫は月に戻ってからも地球での振る舞いが残ってしまい、とうとう宇宙に追放されてしまった。


 一寸法師は打ち出の小づちで大きくなってからもたびたび元の大きさに戻ってしまい、ある日小さくなった時に人に踏みつぶされて死んでしまったそうだ。


 織姫と彦星は天の川を渡る時に、二人とも足を滑らせ川に流されてしまいそれっきり行方不明。


 金太郎は晩年、動物の言葉でしか話さなくなりある日一人で山に入ってしまいそれ以来行方知れずだそうだ。


 はなさかじいさんに出てくる意地悪爺さんは本当はいい人で、はなさかじいさんが桜が綺麗な花を咲かせるようにと桜の木の下に隠した死体を最期まで知らないと言い続けていた。


 泣いた赤鬼は事情を知らない人間に青鬼の悪口を言われ続けて、ある日とうとう我慢が出来なくなって村人たちを殺してしまい青鬼を探す旅に出かけたんだよ。

 

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