第4話 一行怪談4

 甘い甘いと言いながら、幼い妹は自身の腕を傷つけ流れ出た血を舐め続けている。


 日頃から「元に戻れる」と繰り返していた祖父が、家の屋根が崩れてぺしゃんこになってから笑顔で変わらぬ生活を続けている。


 煮物を作ろうとカボチャを切ったところ、カボチャの種だと思ったそれは子供の小さな歯であった。


 いつも話に尾ひれをつける癖のある伯父の耳が、金魚のひれのように変化しているのに気付いているのは私だけであろうか。


 いつも私の後ろをついてきている霊は私が殺した母なのですと語る老婆の後ろには、どう見ても年若い青ざめた男性だ。


 私がいつも彼のプロポーズを断る理由は、彼の後ろで「逃げて」と口パクで叫ぶ幼い彼の姿が見えるからです。


 ある一組のカップルが心中したことで有名な池の周りでは、恋人の名を呼び続ける男性の霊とその後ろで薄ら笑いを浮かべる女の霊がよく目撃される。


 女の声が聞こえると叫び電車に飛び込んだ兄の死後、私の耳元で「愛している」という兄の囁き声がずっと響いている。


 私が持っているCDにシークレットトラックが入っていることに気付いたため再生してみると無音が続いたため停止しCDを取り出すと、恨めしそうなアーティストの顔がCDに貼り付いていた。


 弟のお気に入りのキャンディーの味は、血の池味と腐った脳髄味です。


 姉の頭にドライバーが刺さってからというものそれまでとは違い穏やかな性格になったことから、私たち家族はドライバーを抜くべきかそのままにすべきか考えあぐねている。


 私を見つめる夫の瞳には私が映っておらず、私は本当に生きているのか最近不安になってきた。


 妻が洗濯をすると、必ず水が真っ赤になり何かの肉の塊がいくつも浮いている。


 父と母が二人とも映っている写真には、二人の後ろに恨めしそうな瞳の子供が二人を指さしている姿が必ず移っている。


 曾祖父を殺した理由は彼がいつまでたっても青年の姿のままなので、ひょっとしたら不老不死の存在ではないかと思い殺してみたのですが、殺した途端灰になってしまいがっかりしてしまいました。


 嫌な予感がし急いで妻を埋めた山へと向かい掘り返してみたが、当時の妻の服だけが残っておりどうしたものかと頭を抱えていると後ろで「あなた」と呼ぶ妻の声が聞こえた。


 土で汚れた息子の靴を洗っていると小さな顔が次々と浮かんでは消え、洗い終えた時には息子の靴は跡形もなく消えてしまっていた。


 娘の部屋へ行ってみるとそこに娘の姿はなく、娘の服を着た一匹の黒猫が悲しげに鳴いて開いた窓から外へ出て行ってしまった。


 「相手のことを批判するにはまずその相手を理解しなければ」が口癖の父は、50名ほどの人を生きたまま解剖していたため逮捕された。


 母と祖母のうなじには目があり、最近私もうなじに違和感を感じ恐る恐るうなじに触るとぬるりとした何かに触れた。

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