出会い
家族は例外
少しややこしい内容なので、文章力が足りなかったかもしれませんが、ご了承ください‥‥‥。
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「ただいま‥‥‥」
自宅なのに、まるで他人の家に侵入しているみたいだ。
「あら、お帰りだいき」
リビングに出ると、キッチンで僕の大好きなカレーを作っている母さんが気軽に返事を返してくれた。木目調のダイニングテーブルの上には既にサラダが盛られており、後はご飯にカレーを注ぐだけらしい。
「今日はちょっと遅かったわね?」
「っ‥‥‥ちょ、ちょっと野暮用が出来て遅れちゃったんだ」
‥‥‥やっぱり、僕の顔を見ても母さんは動揺しない。
「そうだったのね。だいきがあんまり遅いもんだから
「ご、ごめん」
本来なら母さんは、【命分け】を使った僕のことを忘れているはずだ。
でも目の前にいる母さんはあくまで自然体で、僕の知っている母さんのそのままだ。妹の玲奈に似たおっとりした目に、小さな唇。ポニーテールにした髪はフワフワと横に揺れている。
そして何より、母さんは僕の顔を見ても何一つ表情を変えたりしなかった。
僕はまだ自分の顔を鏡で見ていない。けど、もう、分かってる。どれ程僕の顔が酷い有様になっているかを。美緒にあんな目で見られたら嫌でも分かってしまった。
―――見たく、ないなぁ‥‥‥。
でも僕は決めたんだ―――”生きる”って。
だから前に進むしかない。一度でも後ろを振り向いたら、もう後戻り出来ない気がするから。
足掻いて足掻いて足掻いて、そしてその先に何も待っていなくても、僕は生きる。
そう、決めたんだ。
「玲奈待ちくたびれたから、呼んできてくれる?」
「うん‥‥‥」
母さんは、僕と視線を交わしている。必然的に僕の顔は視界に入っているはずだ。
でも母さんは、嫌悪した表情は全く見せない。
演技だとしても、それは出来過ぎだ。普通なら酷い顔になって帰ってきた息子を見て寸分の動揺も見せないなんて事は不可能だ。
しかし母さんは、あたかも日常的に僕に接する。
これが示すことは――。
―――あぁ、地母神様が言っていた事は本当だったんだ‥‥‥。
だいきは帰路につく前、地母神に言われた言葉を思い出す。
◆◇
「―――しかしどの世界にも例外は必ず存在するものじゃ」
地母神は、だいきが段々と落ち着いてきた頃合いに唐突に話し始めた。
「例外、ですか‥‥‥?」
「そうじゃ。本来【命分け】を使用した人間は、対象の”記憶を持つ者”から”存在”という記憶を消されるんじゃ。―――先程の
「うっ」
痛い所を衝かれただいき。
「‥‥‥頼むからまた妾に慰められるような事はせんどいてのぉ」
「だい、じょうぶです‥‥‥」
だいきは再び決壊しそうになる涙腺のダムにグッと力を籠め、無理やり涙を引っ込めた。
「話は戻るがの、妾の言うた例外とはすなわち――”存在”という記憶を消されるのではなく”記憶の存在”を消される者の事言う」
「‥‥‥?」
だいきは言われた内容がいまいちピンとこず、はてな顔で聞き返した。
「えっと、もう少し分かりやすく言ってもらっても‥‥‥?」
「む、分からんかったか。すまんの」
「いえいえ」
地母神は可愛らしく謝った。
「分かり易く言うとな―――例外とは、お主の事を”存在として”は覚えておるが、お主に関するが”記憶が無い”状態の者の事じゃ」
「‥‥‥難しい、ですね」
「そうじゃのぉ、この辺はちとややこしいんじゃよ」
要するに、僕の事は覚えているけど、ただ覚えているだけで何の記憶もない人、って事か‥‥‥。
「正直妾も【命分け】の全てを知っている訳じゃないのじゃ‥‥‥」
「何か言いました?」
「っ、な、何でもないぞ」
「‥‥‥?そうですか」
何か言ったような気がしたんだけどな。
少し動揺してるけど大丈夫だろうか。
「ここからが本題での、その例外に含まれる人間は”対象と血の繋がりを持つ者”じゃ。所謂―――家族じゃの」
「っ!」
「お主の母、父、あるいは兄弟姉妹。お主の血縁関係にある者全て、お主を存在だけは覚えちょる」
「存在だけって、そんなの――」
――辛いだけじゃないか‥‥‥。
「……血縁関係にある者は、お主を家族だとは認識する。じゃがそれだけじゃ。お主に関する以前の記憶は全く無くなり、その消された過去は都合のいい様に書き換えられる」
「‥‥‥」
地母神は言いにくそうに話すが、それでも伝えなければいけないと自らに脅迫する。
「じゃからの‥‥‥多分じゃが、お主の≪容姿≫が変わった事も都合のいい様に書き換えられちょるじゃろう‥‥‥」
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