【命分け】の代償ー③ 美緒side
「楽しかったね!」
「うん……」
「だいき、どうかしたの?」
浮かない顔してるけど、どうかしたのかな?
私なんか悪い事しちゃったかな‥‥‥?
「っ、ううん、なんでもないよ。ただもう終わりかぁと思って」
「だよね!もうほんと今日は最高だったよ!」
良かった!だいきが喜んでくれるのが私にとっては一番うれしい!
「はぁ、俺ほんと今日何の為に来たんだよ‥‥‥」
「ごめんごめん翔。今日はどうしても3人行きたかったんだよ」
「むぅ~。私は2人きりのデートが良かったけどねっ」
ふん、本当なら今日はだいきと2人きりのデートのはずだったのに、何故か翔も一緒に居る。テーマパークは初めて来たから、だいきと2人きりが良かったんだけどな。
けどだいきがどうしてもって言うから私は渋々承諾してしまった。
あの子犬のつぶらな瞳のような目で見てくるのは本当にずるいと思う!あんな目で見られたら縦に頷くしかないじゃない!だいきは本当にズルいと思う!
けどまあ、そんなだいきも大好きなんだけど……ね。
「美緒?顔赤いけどどうかした?」
「ううん!な、なんでもないよ!」
「そう……?」
み、見られた!恥ずかしい!
「ねぇ美緒、最後にあの観覧車、乗らない?」
私が恥ずかしがってそっぽ向いていると、だいきは少しだけ低い声でそう言ってきた。
「うんそうだね。もうそろそろ閉まるし、最後に乗ろっか!」
「うん、ありがとう」
「俺は乗らんぞ。あんな狭い空間でイチャイチャされたら死ぬ」
「ふふっ、羨ましいんだぁ~」
「う、うるせぇ美緒!」
本当のこと言うと、翔が私の事を好きだという事は知っている。
私達3人は、小さい頃からずっと一緒だった。幼馴染にしてはちょっと仲が良すぎるって良く友達に言われるけど、私はそんな事は無いと思う。だってだいきと翔は私にとって宝石みたいな大切な存在だから。
そんな日常を過ごしていた私達だけど、ある日から翔が私にアピールしてきた。当時の私は幼かったからそれが何のアピールかは分からなかったけど、段々と大人になっていくにつれて理解するようになった。逆に露骨にアピールし過ぎてちょっと引いたくらいに‥‥‥。
けど翔は超鈍感だから、そんな露骨なアピールがバレていないと思っているらしい。正直ここまで鈍感な人は見たことが無い気がする。私は翔のアピールをやんわりと断っていたんだけど、それすらも気が付かないほどに。
だいきも大概だけど、翔はもっとひどい。
私にとって一番の難関だったのが、”噂”だった。
友達には翔と付き合っていると噂され、そしてだいきが勘違いをする。
―――私が好きなのはだいき!!!
って言えれば良かったんだけど、いざ言おうと思った時物凄い緊張と恥ずかしさに負けてしまった。
もとはと言えばだいきの勘違いを訂正しなかったせいだけど、今はこうしてだいきと付き合えることが出来たから、結果オーライ!
でも1年だけ、なんだけどね――。
正直、私の病気を打ち明けるかは迷った。
後1年しか生きられない女に告白されても、ただ迷惑だろうから。
でも、思ったんだ。
―――どうせ1年しか生きられないなら、とことん迷惑かけてやろう!って。
一人で抱え込んでいたら、多分私は壊れるから。
病気が発覚した日から、私は毎晩毎晩ベッドを涙で濡らした。
ろくに寝れる日々がなかった。
そんな時いっつも脳裡に浮かぶのは、だいきの顔、だいきの笑顔、だいきの瞳、だいきの後ろ姿、だいきの泣いた姿、だいきの後ろ姿、だいきの寝ている姿。
色んなだいきが私の涙腺をさらに攻撃してくるんだ。
だから私はおもった。私は今だいきに泣かされたから、私も迷惑かけてやろうって。とことん迷惑かけて、そして死んでやろうって。
告白は正直上手く行くとは思わなかった。
でも、だいきは――
―――美緒、僕も美緒が大好きです。こんな僕だけど、付き合ってください。
その後は、2人してみっともなく泣いた。
誰も居ない教室だったけど、なんとなく、気恥ずかしかった。
けど、すっきりした。
私を囲んでいるドロドロとしたものが、私の中を蠢く色んな感情が、一気に洗い流された気がした。
―――あぁ、私やっぱりだいきのこと好きなんだ‥‥‥
だいきをいつ好きになったなんて、もう覚えていない。
ただ覚えているのは、だいきが私のヒーローという事だけ。
気付いたら、胸が苦しくなっていた。
だいきがクラスの女子と話している時、私は自分が嫉妬しているのを感じた。
クラス替えの時、心の中でだいきと隣の席になりますようにと祈った。
翔の事が好きと言って、だいきの嫉妬心を煽ろうとした。
私はだいきと一緒に居られれば、なんにも要らないんだ。
隣にだいきさえ居てくれれば、私の心は満たされる。
だいきも一緒だといいなぁ‥‥‥。
人の心が読める道具とか欲しい!
そしたら、きっと―――――――――。
◇
「‥‥‥今日は、楽しかったね」
「うんっ」
私達は今観覧車に乗っている。
翔は下で待っているらしい。
「ねぇ、美緒」
しばらく沈黙が続いたかと思うと、だいきが私に視線を戻して言った。
「うん?どうしたの?」
「‥‥‥僕は、美緒が大好きだよ」
「っ!・・・わ、私もっ」
え!?な、なに急に!?なんで急にそんな事いってくるの!?もちろん私も大好きだけど急に言うのは無しだって!
美緒は自分の顔が赤く染まっていくのを自覚する。
「美緒の笑った顔や、悲しんでる顔、何かに熱中している顔、・・・嫉妬している顔。美緒の全てが好きだ」
「う、うん……」
今思えば、朝からだいきの様子は少し変だったんだ。
「僕は、美緒の為なら、死んだっていい。何だってできる気がするんだ‥‥」
なんで、私は気付かなかったんだろう。
私は、浮かれていたのかもしれない。
観覧車が丁度12時を指した時、だいきは溢れ出る涙を流しながら言った。
「美緒――――心の底から、愛しています。」
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