第64話 増えている“元ラノベ作家”
お久しぶりです。
最近、このシリーズをよくご覧いただいているようなので、たまには追加を。
数日前に「他の人は続々と受賞して書籍化作家になってるのに、俺はどこにも引っかからない」と嘆くツイートを見ました。
『受賞して書籍化』というのは、頑張りが認められたい、というのもあるのかもしれません。
しかし、受賞したら安定するわけではないのです。
その後、作家として続かない人がほとんです。
実際、“元ラノベ作家”さんが増えています。
20代でラノベの賞を取り、そこから本を数冊出したけど、受賞したときが頂点で、数年経った今ではもう収入がないとか。
執筆に集中しようと会社も辞めてみたものの、数年後には受賞時に担当してくれた編集者さんから連絡も来なくなり、人間関係も全然無くなってしまって、やってることと言えば、ネットの巡回だけとか。
数冊出せばいいほうで、デビュー作だけで終わってしまう人もいます。
試しに5年前の「2017年 ラノベノベル 受賞作」で検索してみてください。
大賞を取った人でも、その一冊で終わりだったり、あるいは受賞後に本を出しても2巻までで終わりも多いです。
たった5年前でも見なくなってしまった作家さんもいらっしゃいます。
最初に書いた20代でラノベの賞を取って、そこから本を数冊出したけど……という方は、何冊も本を出してらっしゃるのですから、かなりすごい人です。
でも、年収が良いとも限りません。
中には「年に2、3冊出してるけど、年収が200万円」と言う人もいます。
「執筆にかけてる時間を考えると、最低賃金でバイトしてるほうが儲かる」という言葉も聞いたことがあります。
東京の最低賃金が1041円ですので、1日8時間×20日×12ヶ月働いたら、1920000円なので、とんとんです。
しかも、小説家と違い、健康保険とかいろんな保障面でも有利です。
小説が売れなくて、そのまま“元ラノベ作家”になった方々も作品が悪いのではないと思います。なにせ何千という候補作の中から選ばれているのですから。
このシリーズのキャッチフレーズが「あなたの小説が読まれないのは別の原因かもしれません」ですが、単行本も同じことが起きています。
宣伝をするのが一番大事、認知度を高めることが必要、みたいな感じになっていて、最初の時点で売れないと次が無いからと、とにかく作家さんもSNSで宣伝したり、話題になろうと必死だったりします。
昔でしたら、受賞したらその後に文芸誌のようなものに連載されて、原稿料がありましたが、ラノベはそういうものもありません。
受賞をして書籍化されても、その後もまた「小説投稿サイトに投稿して話題になったらまた出してあげるよ」となったりです。
「プロの人がランキングにいるとイヤだなぁ」という方もいらっしゃいますが、そういう事情があるのです。
この話の最初に書いた「他の人は続々と受賞してるのに、俺は……」と嘆く話は、必要以上に嘆く必要はないのです。
受賞しても続かずに消えてしまう人、名前を変えて何度か頑張ったけど無理で辞めてしまった人、中には心身を病んでしまう人もいます。
学生の内にデビューというのを憧れる方もいますが「若い内にデビューなんてしなきゃよかった」という方もいます。
記念のように「受賞をすれば満足」なら別ですが、ずっと作家として書き続けることが目標なら、賞にひっかからないことよりも、書き続けるための生活の基盤と健康と情熱の維持に努めるほうが大事です。
なかなかこの話だけだとイメージが出来ないかもしれないので「元ラノベ作家」で検索してみてください。
いろいろな方の体験談が出てきます。
その体験談を読んで、受賞だけが終わりでないこと、受賞してもなかなか本が売れなかったらどうするかを考えておくこと、それでも書き続けるかどうかを、執筆の手が止まった時にでも思い描いてみてください。
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