第52話 本当になりたいのは小説家なのか?
小説を書くのに夢中な時はいいのですが、ふと立ち止まった時に考えてみるといいのが「本当になりたいのは何なのか?」です。
前に小説を書き始めても一年もすると、もう書かなくなってる人も多いというお話をしました。
逆に十代の頃からもう二十年、三十年も書いているという方もいらっしゃいます。
なぜ「本当になりたいのは何なのか?」を問うかというと「本当に小説を書くのが正解のなのか?」という問題に行きつくからです。
「小説を書きたい」のではなく「有名になりたい」「お金が欲しい」「見返したい」などが目的の場合もあります。
中には小説を書いていたはずが、SNSでの活動や批評や配信に力を入れるようになり始める人もいます。
小説以外の活動で注目されるようになった方は、実はそのほうが向いているのかもしれないです。
そして、目的が「小説を書く」より「有名になりたい」ならば、その向いているほうを頑張るほうがいいかもしれないのです。
「お金が欲しい」も微妙なところです。
賞を取ったからと言って、その後の人生が約束されるわけではありません。
本が出たけど増刷されなかった、次がなかったという話もたくさん見ます。
実際、ある作家さんのボヤキで「次の本は電子書籍で出して、支払いは出来高にするからと言われた」というのを見たことがあります。
普通は本を刷って売れた分ではなく、その「刷った分」が印税として入るはずですが、出来高ならもう同人誌と変わりません。
それで出版社が宣伝に力を入れてくれるならいいのですが、もう紙の本を出さないとなったら宣伝も「作者さんがやって」になるのです。
書籍化した人も多くが「専業にならないで。きちんと今の仕事を続けて」と言います。人間、生きるには毎月お金が必要です。家賃・光熱費・食費……それらが贅沢しなくても十万はかかります。安定収入がないと暮らしてもいけないのです。
「昔の文豪はそんなこともなく悠々と文章だけ書いていたのに」的な嘆きを見たことがありますが、違います。
文豪たちも多くが新聞記者であったり、教師であったり、仕事をしていました。
専業で小説を書いていたのは、昭和の高度成長期とバブルの頃の景気のいい時だけの特別な話なのです。
また、専業でやっていた人たちも「生活のために書きたくもない雑誌エッセイとかまで書いていて本当に書きたいものを書く時間がない」と嘆くこともあったようです。
「お金が欲しい+好きなものを書きたい」場合は専業がいいかも難しいようです。
「お金が欲しい」が目的の場合、小説を書くより、その時間、勉強して、大手の企業に入ったほうがいいかもしれません。
不安定な作家収入より、収入が安定し、社会的信用も高くなるという大きなおまけつきです。
「見返したい」も同様です。
松本清張さんクラスの大物になれば、確かに見返せるでしょうけれど、そうでなければ、みんなが知る大手企業の社員になったほうがマシです。
年を取ると特にそうなります。
自分はラノベを読む大人ですが、いまだにラノベを下に見る大人もいます。
ラノベ作家になったら見返せるどころか「お前そんな年でまだそんなことしてるの?」的な扱いを受けることもあります。
「そんな話はいい! 俺はとにかく小説を書いて書いて書きまくって、それで書籍化されるんだ!」と思った方は、ぜひそのまま邁進してください。
そう思えているなら、それが「本当になりたいこと」なのです。
ただ、もし、有名になりたいとかお金が欲しいとか見返したいが目的だったら「小説を書くのが一番いい道なのか?」と考え直してみるのもいいのかもしれません。
あるいは他のことの方が向いていて、そっちに力を入れたほうが有名になれる可能性が高いかもしれないのです。
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