第一一一〇回 サプライズは突然の告白。


 ――あれ? 何度も押し直すカンちゃん。起爆のスイッチは別の働きをした。



 ようちゃんの身体に細いワイヤーの糸で絡めた小型爆弾は、何とダミーだった。代わりに画面いっぱいに広がる花火。「ハッピーバースデーだね、陽ちゃん」と一言を添えた。


「覚えててくれてたのね?」


「ううん、少し前まで忘れてた。あの雨の日に思い出したんだ。お家を飛び出して、雨が涙を隠してくれた日に。僕と同じ日が誕生日。陽ちゃんと一緒にハッピーバースデ―」


 ちょっぴり涙で滲んだ。その日はカンちゃんも一緒だった。


 陽ちゃんが僕をお家まで連れてきたから。その日が丁度、陽ちゃんのお誕生日会だったから。出会ってその日に、その瞬間から、すぐお友達になれたんだね。あの頃は……


 すると、陽ちゃんと同じブースの方から、


「何も変わってないよ、お友達になることは。ちょっと情報量が増えただけでね」


 とマイク越しに、美千留みちるの声が響いたの。


「私は、千佳ちかとお友達になりたかっただけ。あの頃は、どうそれを伝えたらいいのか。それに羨ましかったんだ。着飾らなくても、あなたが可愛かったから嫉妬してた。ホントは皆、千佳のことが好きだったから。男も女も関係なく……また、対戦してくれるよね?」


 美千留は、本当に不器用だ。


 でも、僕はそんな美千留が、とても可愛く思えた。ずっと、お友達……


「モチだよ。ゲームは敵だけど、リアルはお友達だから。このウメチカ戦のお陰で、僕らは本当の意味で、お友達になれたんだから。本当にサプライズの塊だよね」


 と言った途端、拍手が一斉に沸き上がった。


 この夏、白く輝いた瞬間だった。僕らの物語は広がってゆくの、永遠に。



 ちょっとしたキッカケが、二度とない今生の思い出に。


 或いは、未来永劫に広がってゆく縁なのだと、僕は思った……



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