第一一〇五回 五回目となる、この会場。


 ――その場所は、ウメチカ戦だけに梅田の地下。デパートの一角で行われている。



 そのデパートの名は『ドバシカメラ』


 今年で五回目の開催となる。今年は例年より早い開催。まだ、迎えた実感はなかった。


 でも次第に人は訪れる。けれど、例年よりも少ない。でも、参加者や視聴者も増えている。それはオンラインの充実。オンラインが主流となってきていることを物語っていた。


 それでも僕らは会場を訪れている。


 参加者の面々と直に会うため、それも醍醐味の一つ。すると……


千佳ちか、来たね」と、美千留みちるが駆け寄ってきた。この光景も、思えばウメチカ戦のお陰。


 初めの頃は会いたくなかった相手。五回の経緯を経て、もう親友の域にまでなれた。昔は僕をいじめていた子だったから。それさえも包み込むことのできた場だったから……


「あ……」と、カンちゃんは声を漏らした、美千留の顔を見て。


「ン? もしかして……」と、美千留はカンちゃんの顔を見る。


 そして僕は思う。二人に接点ってあったのだろうかと。すると美千留は、


「この子じゃない? あなたが対戦したいって子」と、手招きをした、自動販売機の向こうに向かって。そして現れる、コツコツと。……廊下を鳴り響かせながら。


「久しぶりね、こうして顔を合せるのは」


 と、その子は言う。背は百六十ほどの、僕らから見れば長身でスラッとした容姿。羨ましく思える程に大人って感じ。するとカンちゃんは、


「ついにこの日が来たね」と、そっと言う。声の感じも女の子と区別がつかないの。


「そうね、私たちの決着もここで」


「昔のウチじゃないから、必ず勝ってみせるよ」


 その子の名前は、まだ明かされることはなかったけど、僕はある予想をした。この二人に重なるもの。僕が太郎君と再会したばかりの頃に。そして思う。僕は昔、この子に会っているような気がしてきた。それもそれもカンちゃんと一緒だった、遠い昔に……



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