第一一〇四回 七夕から、間はないけど。


 ――七夕といえば、その前日が僕らの誕生日。それから、まだ一週間だった。


 本年は瞬く間に三連休が訪れた。ウメチカ戦が訪れるのも、まるで急展開のような感じさえもした。静かに訪れたこの度のウメチカ戦、十三日の朝を迎えても、あまり実感がないままで……橙色の照明の中、ボンヤリとした感覚で、ベビーベッドの我が子たちを見守る。次第に出掛ける方向へと、僕の周囲は動き出した。とくに梨花りか……


「さ、しっかり起きて」と言いつつ、僕の手を引っ張りつつ浴室へ。シャワーで整う。僕の身体は、もうママになった身体……でも見掛けは、梨花とあまり区別のつかない身体。


 それに、僕は℮スポが好きなのは変わらない。


 今年もまた、これまでと同じくウメチカ戦にエントリーした。それから、とある小説サイトの『書くと読む』でエッセイを書くことも、先生への夢だって、変わらないの。


 そして、パパとママが揃った家庭だって……


 そこで響くインターフォン。珍しく僕が迎える、玄関のドアを開けた。いつもは梨花が出ていたけど、今度は僕が。……そこには、思わぬ人が立っていた。僕はてっきり、


 太郎たろう君と思っていたけど、まさかの彼……カンちゃんだった。


「お、はよっ」と、添える挨拶。


「おはよ、カンちゃん。今日は宜しくね」と、できる限り明るく。稽古不足を幕は待たないようだけど、何しろ短い期間。コンビを組んだのが、つい二日前のことだからで、


「ほぼ、ぶっつけ本番だけど、やらない後悔よりもやる後悔だよ、千佳ちかちゃん。ウチの願いは半分叶ってるから。ウチとコンビを組んでくれてるのが千佳ちゃん、君だから」


 と、カンちゃんは満面な笑みを見せる。


 ……でも、どうして僕の家を知ってたのだろう? まだ教えてもいなかった。もしかしたらりんが? いやいや彼女とは会っていない様子だ。僕とは本当に久しぶりに……


 そうは思いながらも、僕らは出発した。ここからは梨花を加えて三人で。最寄りの駅からは太郎君と可奈も合流するという。梨花はちゃんと用意していた。


 あの伝説のプラモデルを。ついに仕上げたのだ、アオヤマの幻の伝説巨人を……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る