第一〇九三回 学園模様、もう期末。


 ――サマーバケーションまでもうすぐ。でもその前に、一学期末考査があった。



 思えば貴重な経験だった。高等部の間に出産。今はもう二児のママ。少しずつ朝のルーティンが蘇ってくる。僕はまだ高校生。学園に登校する日は訪れるの。


 身体も……


 ママの身体になっているけど、見た目は梨花りかと何ら変わらない体型。


 朝シャンはまた梨花と二人で、制服の着替えだって一緒。以前と変わらない感覚。


 それからパパとお母さんの「行ってらっしゃい」という言葉も。一つ違うところは、我が子たちへの挨拶。どちらも女の子。まるで僕と梨花のように、きっとソックリなっていくのかな? 君たちは。と声を掛ける。その後、僕は梨花と共に出発する、学園へ。


 懐かしき道程……


 並んで歩く光景が懐かしく、見慣れた風景も懐かしく、僕は繋いだ、手を……


千佳ちか?」「エヘヘ……」という感じに、そこから先の会話は繋ぐ手の温もりの中に。四駅で下車して歩く。あと何か月……何日、こうして登校できるのかな? 梨花も僕も卒業したなら其々の道。進学する大学は、皆が違う進路。梨花と僕が選んだ道も違うの。


 僕は、やはり教師への道。


 願うは、中等部の先生だ。その思いを知った時、瑞希みずき先生は驚きも驚き。今度は先生と生徒ではなく、先輩と後輩という関係になっていることだろう。……彼女は、やっぱり僕の憧れだった。もう出会った時から、この未来は決まっていたような気がしていた。


 すると、梨花は、


「やっぱり千佳は、瑞希先生が好きなんだね。僕もまた同じ。道は違えども、僕と千佳はずっと一緒だ。生き別れてても、僕らはこうして再会できた。僕らの縁は切っても切れない、そんな関係だから。僕らの絆は、鋼鉄よりも遥かに硬いから。ずっと、ずっと」


 と、目に涙を浮かべながら、僕に言った。僕もまた、貰い泣き。


「そうだね。梨花とは、とっても濃い血で繋がってるから。きっと未来永劫に……」



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