第一〇九四回 教室に入ったのなら。


 ――まるで浦島太郎状態? 見慣れた風景に、皆が皆、以前と変わらない接し方。



千佳ちか、おはよ」との挨拶も変わらずに、りんせつも他愛もないお話で雰囲気を作り、天気てんきちゃんが、あの共通して大好きな漫画の『スクラップブック』で盛り上げてくるの。


 ちょっと……


 一学期末考査の雰囲気とは違うような気がしたけど、ポンポンと肩を叩かれ振り向いたなら、そこには可奈かながいて「さあ、千佳、今日お家へ行くよ。勉学は学生の本業だから」


 と、漸く今は一学期末考査を控えているという臨場感が出てきた。


 それはまた梨花りかも同じ。……梨花だけに苦手な教科の理科に挑むから。なので「お手柔らかに」との言葉を添え可奈に告げた。可奈はクスッと笑って「手取り足取り」と。


 僕はウルッときた……


 すると可奈は、僕に腕を回して肩を引き寄せ、


「その前にね、行こっ、プラネタリウムへ。また三人一緒に」と、誘ってきたの。それは今日の帰り道を意味していた。そして梨花は「ママも偶には息抜きが必要だぞ」と。


 こうして決まった、今日の帰り道。


 新しいプラネタリウムへ行くのは、この度が初めて。可奈の表情から窺えるのは、本人が一番に楽しみにしているということ。ワクワク感漂うオーラ―が僕を包んでくる。


 そこへ、姿を見せた太郎たろう君。


 浦島太郎ではなく、僕のハズバンドの太郎君。


 学園を卒業したら、僕らは正式に籍を入れる。ならば今度こそ、卒業旅行と称しての新婚旅行になってゆく。そこで一つの物語の節目となる。一一一一……千百十一回をウメチカの節目として、新しいウメチカが誕生するの。やっぱりウメチカはゾロ目が区切りだから。思えば令和二年の二月二日にスタートした。そして梨花と僕が一卵性双生児と発覚した日が二二二二……つまり令和二年の二月二十二日だから。


 スタートがゾロ目なら、やはりゴールもゾロ目となるの。そこからまた始まるの。



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