第一〇八九回 令和六年五月十八日の記念日。


 ――その日は、君たちが誕生した日。僕と太郎たろう君に御対面した日だ。



 今はまだ、別々の病室。


 君たちは、新生児室で健やかに。他の赤ちゃんと並んで……


 でも、それも少しの間。


 そこからはね、ずっと一緒。君たちのママとパパが毎日毎日。


 待ち遠しい。


 そう僕は、お布団の中、夢現を繰り返しながら思っていたの。


 白く白い、この風景の中で。


 静かで静かな時間の流れで。



 その日は、そう遠くなかった。母子ともに退院の日も、そんなに遠くなかった。


 夢のような感覚で、お家に我が子たちと一緒。双子の女の子。……僕らを生んだ時のお母さんの心境を察した。それがまさに今の僕だ。我が子たちのお名前は……


 もう決まっていた。


 お家に帰る前、病院を出る前にすでに。


 太郎君と一緒に命名したの。お姉ちゃんの方は梨緒りおで、妹ちゃんの方は千恵ちえと。


 この先のことは、どうするのかは、星野ほしの家で一緒に暮らす。ゆくゆくは某国民的アニメのように、二世帯の大家族となってゆく。どうしてそうなったのかといえば、募る想いが希望となったから。僕と太郎君の共通の願いだったから、幼き日からの……


 ベビーベッドは二人其々。お部屋は同じく、僕と同じお部屋。これを機に、僕のお部屋の位置も広さも変わったの。一階に、大きな古時計の近く。その古時計には、様々なる思い出たちが溢れていた。決して会うことの適わない筈の旧一もとかずおじさんとの出会い。


 ここならば、見守ってくれているような気がして、心強かったから。身体が整ったのなら、僕はまた、学園へ登校することに。最終学年の高等部三年生の過程を全うするため。



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