第一〇八四回 白い世界で咲いている愛たち。
――白く眩い光の中だけど、まだ見える通天閣。その行き交う人々も。
恵美須町と動物園前との境の場所。あと少しなのに……
「もう充分だよ、
「このままじゃ、千佳が壊れちゃうの」と、
――何? 何が起きているの? その途端だ、光に包まれ……いや、消えてゆくような感覚? 身体が熱くなってくる。有り得ない程に熱く。これって何? 何なの?
「千佳の身体は元に戻ろうとしてるの」と、可奈は訴えるように、大きな声で。
「また会えるから、帰ってあげて、あの子たちのためにも」と、梨花も同じく。
ハッとなる僕……
「ありがと、梨花、可奈、サヨナラだけどサヨナラじゃないから」と、その言葉と共に光に包まれた。見える景色は真っ白に。身体は燃える程に熱く……経験はないけど、まるで大気圏を突入したような、そんな感覚と思える程。某アニメでは耐熱フィルムを装備していたのだけど、僕にも多分、備わっているように思える。そしてそのまま……
薄れる意識。でも、遠くから呼ぶ声?
「……千佳」と、明らかに僕を呼ぶ声が、聞こえる、聞こえてくる。
ぼやける景色、白い世界の中で見えたものは……梨花の顔。それに可奈まで。しかも七歳児の二人ではなく今現在。覗き込んでいる十七歳の二人の顔……
僕は倒れているようで、身体が動かず重く重く。まだ距離感のある声だけど、
「あ、千佳、救急車を呼んでるから、もう少しだから」と、梨花の言葉と共に、温かいものが頬に当たった。涙だった。梨花の涙……(どうしたの? 僕は……)と、思いつつ。
見えた、片隅に。あの伝説巨人のプラモデルが、この梨花のお部屋の、そっと片隅に。
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