第一〇八二回 よし! クロスさせるからね。


 ――ハッとなる僕。細やかな違和感は、いつしか本格的なものになる。



 七階から一階の中心は、三階ではなく四階では? でもでも、さっきいた階は四階だった。その中心と言える場所に目印的なものなんて……確かなかったと思うのだけど?


「フフフ、よく気付いたね、いい疑問だ」と、唐突に小鷹こたかさんの目線が僕の傍にあった。


「ほえ?」と、ビックリした拍子に、我ながら間抜けな声。


 僕の姿は未だに七歳児。小鷹さんはしゃがんでいた。そして満面な笑みで、


「でも問題なし。縦横無尽にクロスは描けるよ。あとは君次第。前に進むことを選ぶのならね……」と、まるで背中を押すように言った。確かに、今いるこの階の中央の棚には何らかの表示がある。まるでまるでシンボルマーク? そしてスーッと背筋を走った。


 冷気にも似た、思い出したこと。


 この時代にないものが存在している、まるで目のような赤と青の……某イベントのマークだ。少なくとも平成にはないもので、更に更に、そこにあるプラモデルもだ……


 母艦の上で片膝を着く伝説の巨人。


 それは令和という、この世界にはない年号に発売されているものだから。梨花りかが欲しいと言っていたのも、十七歳の姿をしていた頃の話だから。因みに令和五年の話……


 そこで明かされる年号。平成二十六年。西暦なら二〇一四年のカレンダーが、チラリと見えたレジの後ろ側。それが、この世界の時代。――なら、とある胸騒ぎが誘われて。


「僕は、前に進む」


 と、いざや前進。足も留めず進むことを選んだ。最後の関門。そのプラモデルを抱いてレジへと。そしてスタンプ用のノートは梨花が、可奈かなも率いて締め括りを果たした。


 見守る小鷹さんと小野内おのうちさん。


 その後に続く帰り道。それはイコール、お別れの予感……


 なので、もう少し堪能してから出ようと、お別れを惜しむように少しでも少しでも……


 僅かな時間だけれど、不思議な時間。過去と未来が融合したような、そんな感覚。



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