新・第九章 四月の終わりにクロスする想い。
第一〇八一回 春の陽気にも似た、その答え。
――注目。大注目されている二人のキスシーン。今ここにいる誰もの目を惹いて。
ポン! と音を立てて離れる唇。紅潮する
「小鷹君、私の唇を奪った代償は高いよ。解ってるんでしょうね?」
「小野内さん、もちろんだ。この謎はクロスの連鎖で片が付く。今、証明するから」
僕は思った。
完売のショックで泣く
そしてクロスの連鎖とは? 謎が謎を呼ぶ、重なる油絵の色たちのような感覚。流れるのはリズミカルな曲。何らかのBGM。梨花の涙が止まるような、そんな爽やかさ。
「さあ、行こう。完売なんかしてないから元気を出して。そして階はここではなく、もう一つ下の階。七と七はクロスしてるから。三階の中心にそれはある。見せてあげる」
と、小鷹さんのその言葉を筆頭に、僕らは歩む。
まるで行進。聖者をイメージした行進。僕は手を取り合う。梨花と可奈と並んで。
向かうは三階の中心。七階から一階に向かって線を引くの、もちろん脳内で。……そうそう、そうだよ。僕は気付き始めた、小鷹さんの導き出そうとしている答えを。小野内さんも僕も、さっきは誤解をしていた。掛けるという意味。クロスという発想はなかった。
それが証拠に、ハッとなった小野内さん。
「小鷹君、私たちの目指してるものって」「そうだよ。謎の連鎖で忘れちゃったみたいだね、僕らの目指してるもの。僕らは名探偵じゃなく、あくまで小市民だからね」
すると、小野内さんからクスッと漏れる笑い声。彼女の唇は薄く……
「そうだったね、忘れちゃってた。でもそれはヒント? それとも忠告?」「どっちもかな? ただ縦横無尽に連鎖するってこと。それは想い一つだよ。さあ、ショータイム!」
七階建てのこの建物に、クロス=Xを描いてみる。その交わる場所、線と線が交わる場所にこそ、その答えがある。そして今、その場所に、我らは立っていた。
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