第一〇七八回 駆け抜ける光は地下も照らす。


 ――それは電車。地下を走る電車と、僕ら三人の心。



 繋ぎ止めたのは、七歳児のままの過去と、十七歳から続く未来。


 そして浮かぶ、小野内おのうちさんの言葉の意味。輪郭はなく、あくまで感触に過ぎないけれども僕には解った。言葉での説明には程遠いけど、確かに、確かに……


 光は照らす。暗闇の地下の諸々を。

 今この時に、全てを照らすと信じ。


 膨らむ期待。揺れるも微々たるものだ。まっすぐにまっしぐら。レールに沿って僕らを乗せた電車は走る。今は九箱の内、六箱が梨花りかの持つ鞄に。七歳児が持つ鞄は、大人が持つ鞄でも両手で抱える程に大きかった。箱の大きさは小箱でも、ボリュームは満点。


 スタンプはもう四つのお店で得た。残り二店舗。行く先は日本橋だ。

 ……その筈だった。でもね、


「あー千佳ちか、乗り過ごしちゃったじゃない」と、まず梨花から。


「いつの間に寝ちゃってるの? この子は」と、次に可奈かなから。


 そう。何と肝心なところで、まさかの一駅過ぎ。日本橋の次は恵美須町……そう、恵美須町だったね。なら「まだ大丈夫。と、いうより目的地には丁度いい下車ポイント」


 と、ここで降りる。


 三人一緒に駆け上がる階段。ハアハアと息を吐きながら。眩しいばかりの、包み込む光は地上が近いという証。僕の計算が正しいのであるならば、丁度アーケード街へと。


 出でる地上。近くには、ビッグサイズの模型屋がある筈。

 それからキッズステーションも。二店舗が向かい合わせに聳え立っている。


 フーッと息を吐く僕は、


「入るよ、梨花、可奈」と、いつしか仕切っていて……


「千佳、何かお姉ちゃんみたい」「うん、素敵」と、梨花と可奈は後に続く。エッヘンと胸を張った。何せ中身は十七歳だから。僕がきっと、この子たちを守り抜く。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る