第一〇七七回 そして大地割りそそり立つ姿。


 ――そう。大地を割るような、そんな感じの音と共に、開かれた四つ目の扉。



 導かれたキーワードは『OKONOMI』……お好み焼き屋だけに、お好みだった。


 そしてその扉の向こうは光に包まれし、レトロな世界。

 もっと幼き日に、お母さんと歩いたお店の中みたいに。


 駄菓子屋のように小さなお店。そうね、親戚の子のお家に遊びに行った記憶。キラキラ弾む梨花りかの笑顔。その笑顔はまた、僕の笑顔。もっと昔から知り合っていた? そんな感じの記憶。そして可奈かなも交えて三人で分かち合っていた。今ではない、もっと過去に。


 そそり立つ、伝説巨人の姿。


 それは小箱。全部で九つ集めたら、母艦が頭部に乗ったものや、母艦……らしきものに変形したもの。そして四つのメカが合体するものも。残りは、幻の三体合体も入手へ。


 九つ集まれば、発売された全種類が手の中に。


 それだけではなく、僕らの伝説に残ってゆく。いかに時を越えようが、消えることのない縁。僕ら三人が繋がった記憶の糸。繋ぎ止められた、想い出の糸だったから……


 すると、


「良かったね」


 と、まるで祝福するような笑顔。小野内おのうちさんが、そこにいた。


千佳ちかちゃんだったね。君は今、大切なものを繋ぎ止めた。また出会えるから。あとは日本橋だね、思い切り愉しんで。きっとそこが、この旅のゴール。そこに答えはあるよ」


 と、彼女が残した言葉……


 それは眩く輝く光と共に、消えていった。


 一瞬のことだったの。僕らはもう、別の場所へと移っていた。……というのか、その場所自体が存在していたの? って感じに近い。ここはアーケード街の片隅で、そして、


「梨花、可奈、行くよ。もうゴールは近いから」


 と、残されたのは僕ら三人。もしかしたら……初めから僕ら三人だけだったのかも。



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