第一〇七四回 ザ・セレブチックな関西名物。


 ――と、いうことで、ちょっとばかりアダルト風味。



 返し技を披露。鉄板の上でお好み焼きの表から裏へと引っ繰り返す。用いる道具はヘラともコテとも呼ばれる名前がハッキリしてない道具だ。


 ……このエピソードを執筆して、初めてそう思った。呼び名は様々。何となく三味線の撥にも形状は似ている? その金属製の一回り大きな感じのもの。例えば例えば……


「もんじゃ焼きに似てるね……」


 と、梨花りかの声が耳元でした。ゾクッとする感覚。僕は七歳児になっても耳元は弱い。


 しかもドアップだから、潤んだ瞳で。そしてホクホクと食している。本当に美味しそうな顔をして……僕も僕で。すると可奈かなが「熱いの大丈夫? 私はやっぱり猫舌」と言いながら、フーフーと冷ましながら食している。その横には未来みらい君がいる。


 お好み焼きの引っ繰り返しは、未来君もまた披露していた。その中に於いて、


千佳ちかちゃん、上手だね」


 と誉めるものだから、ついつい「引っ繰り返すのは卓袱台もだけどね」と調子に乗り、


「一徹してるね、面白―い」


 と、可奈はクスクス笑う。そして梨花は「それって巨人のお星様だね。熱血野球物語の親子の絆を描いたアニメね、皆知ってたんだ。僕らが生れるずっと前のアニメなのにね」


 意外にも話題は沸騰した。


 猫舌の可奈も、これならお得意なマシンガントークを披露できる。


 それにしてもこの店内、お好み焼き屋にしてはお洒落な内装。女の子が喜びそうなムードを重視したような雰囲気。それが証拠に、カップルが多いの。


 すると何やら奥の方かな? 会話の内容が、まるで名探偵のような感じ? この店の秘密について調べている? ある謎解きをすれば、伝説巨人のプラモデルがゲットできる。


 ダッと駆け寄った。「あ、ちょっと」と僕の声よりも速やかに、


 梨花が駆け出したのだ。可奈も釣られて一緒に。僕はまだ食している最中だから……



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