第一〇七三回 ザ・カルテットが挑むパズル。


 ――そうだね、喩えるならパズルだね。それがこのスタンプラリーの全貌。



 伝説巨人シリーズのプラモデルは全部で九種類。そしてスタンプラリーで訪れることになる店舗は……ええっと、全部で六店舗。それから下車する駅はというとね、


「まずはここ、天神橋筋六丁目。お次は、南森町。それから日本橋……と三駅。それで何処向かってたの? 可奈かな梨花りかもパパとママと一緒に。わかる?」と尋ねてみたの。


 思えば、そう。僕の今の姿は七歳児だけど、脳は十七歳のままだから、中学生の未来みらい君よりも、お姉ちゃんってことになる。彼を陰ながらリードできれば……と思えたの。


 その答えは意外と容易だった。今明かされる二人の行く先は、


「動物園前」と、梨花と可奈の声が揃った。何ということ? 偶然にも行く先が同じだったとは……そしてそれは「えっ、君も?」「えっ、あなたも?」という感じの、新たな話題へと進展していった。そこから広がる二人の世界は、この二人に迷子ということを忘れさせていた。整然とゴールがある。そこがわかったのなら、間違いなく会えるから。


 なら今は、南森町へ向かうべし。


 ……と、その前に「腹ごしらえだ。皆、お好み焼き好きか?」と、未来君が訊く。


 やはり場を仕切るのは、見た目でも未来君の役目だから。


「お好み焼きって、どんなの?」と、梨花が訊ねた。すると可奈が「初めてなの?」と言葉を掛けて……梨花はコクリと頷いた。お好み焼きといえば、王道なる関西名物だけど、


「僕ね、遠く関東の方から来たから。家族旅行で……」と、言ったの。


 それによって、梨花が関西人でないことが判明した。なら……尚更、


「案内してあげる。言ったでしょ、僕にとってこの辺は庭だって」と、励ます僕。パッと明るくなる梨花……の筈だったけど、可奈の方が「千佳ちか、カッコイイ」と誉めに褒めた。


「じゃあ俺も、頼りにしてるよ、千佳ちゃん」と……


 未来君も目線を合わせて、僕に言ったのだ。エッヘン! と胸を張って向かったのだ。


 まずは腹ごしらえのお好み焼きへ。この辺なら至る所にありそうだからね。



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