第一〇七二回 リズミカルなテンポは店舗へ。


 ――路地裏から出たのなら、そこはもう表通り。


 お昼が近いこともあり、人混みの波が押し寄せていた。だから、繋ぎ合う手と手。



 七歳児の身長から見れば、大きな人ばかりで、未知なる世界観。でも一人よりも、今は三人いる。可奈かなのマシンガントークが絶妙なリズムを刻んでいるから、心強く……


 押し寄せる人混みの波も、小柄な身体だからスルリスルリと、通り抜けることができていた。ここはアーケード街。天神橋も六丁目から五丁目へと差し掛かっている様子。


 丁度その時だ、


「あった!」と、梨花りかが指をさした。


 何処か懐かしい匂いのする外観。今がもし平成ならば、そのもう一つ前の昭和の雰囲気を漂わせている、そんな感じのお店だ。グッと引っ張られる手……手を繋いでいるものだから、梨花に引っ張られ、そのままお店へ入ったのだ。三人が三人とも。


 店内は狭いと思われるけど、今の僕らの身体には、広い方に思えるの。見て回る梨花は颯爽と探している、お目当てのもの。僕と可奈も探す……並ぶ箱。どのような絵柄なのかは……「ねえ千佳ちか、どんな絵柄の箱なの?」と、可奈が訊いてきたの。『伝説巨人』と梨花が言っていたから、箱の絵をイメージする前に「ねえねえ、伝説巨人の何かシリーズなもの置いてない?」と、可奈は訊いた。その訊いた人が振り返った……


 可奈が訊いた人。その人は男性だけど、お店の人よりずっと若い……しかも結構イケメンで、目線を合わしてくれた。ちゃんとしゃがんで。よく見れば、お兄ちゃんって、


「それなら、あそこに並んでるアレだね。お勧めだよ、見る目が高いね、お嬢さん」と誉めに褒めてくれた、可奈のことを。そして梨花が傍まで駆けてくる、満面な笑みで。


 お兄ちゃんは中学生だそうで、この店の常連さんらしい。お兄ちゃんと言っても、可奈のお兄ちゃんでも僕や梨花のお兄ちゃんではなく他人も他人、御初にお目にかかったの。


「スタンプラリーか、面白そうだね。君たちみたいに小さい子だけでは危ないから、俺も付き合うよ。俺は未来みらい。旅は道連れ世は情けって言うから、これも何かの縁だから」



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