新・第八章 アオヤマのスタンプラリーとパパを訪ねて堺筋。

第一〇七一回 お話は、線路みたいに続くの。


 ――駆け抜ける風は、まだ午前の青色を残していた。



 それは路地裏でも、もれなく……


 皆に分け合う平等に、平等に……


 だから寄り添う、七歳児のままの身体でも、今目の前にいる泣いている子のために。



「どうしたの?」と、優しさは言葉から。ちょっと勇気はいるけど。


 一人じゃない。僕の横には梨花りかがいる。濡れた顔、そっと僕らを見る潤んだ瞳。その子は答える。意外とハッキリと「逸れちゃったの、お母さんと」と言ったの。


 そして、


「僕もなの。パパと逸れちゃって。そしたら、千佳ちかと出会ったの。この子もパパを捜してるって言うから。どお? 僕らと一緒に捜さない? それにアオヤマのプラモデルも集めよっ。スタンプラリーやってるの。君も参加しよ。きっと見るかるよ、君のママ」


 と、梨花は励ました。今目の前にいる、この子を。


 ……梨花らしいと言ったら梨花らしいけど、自分の世界に引き込む力や、根拠はないけど……ほら、見る見るその子は泣き止んで、キラキラと瞳も輝いちゃって。


「うん。でも何で『僕』なの? あなたたち女の子でしょ? それって、今流行りの『ボクッ娘』かな? アニメではよくあるよね? あっ、そうそうお名前は? 私、可奈かな


 という具合の、マシンガンのように放たれる質問? というのかお喋り。梨花は少しばかり圧倒されているようだけど、僕はクスッと笑いそうになっていた。可奈のマシンガントークはこの頃も健在だったと思うと。そして自己紹介だね。ここから始まりの。


「梨花」「千佳」と、駆け抜ける風と戯れるように名乗った。


「あなたたち、ソックリね。どっちが梨花ちゃん? どっちが千佳ちゃん? まっ、名前で呼べばわかるね。さあ行くよ、スタンプラリー。地下鉄にも乗るんでしょ」


 と、すっかり可奈は元気になっていた。しかも、いつの間にか可奈のペース?



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