第一〇七〇回 始まりは、遥か草原のように。


 ――トキメク心。地下を走る電車が、その心を運ぶ。


 梅田の地下ウメチカから堺筋へ。御堂筋が交わることにより、僕は梨花りかと手を繋ぎ、巧みに電車を乗り換えていった。一見は逆方向に進むも、そこで乗り換えれば一本というメリット。


 西中島南方で、御堂筋から堺筋へ。


 そこから始まる、パパを訪ねる旅。


 七歳児の梨花は知らない、僕と梨花の秘密。梨花のパパは、また僕のパパでもあることを七歳児の梨花は知らないのだ。もしもタイムリープして、僕が今ここにいるのなら、その時こそがゴール。梨花が無事に、パパと会えたその時が……


 そして天神橋六丁目で途中下車した。僕は梨花と手を繋いで、この地に立つ。どうしてなのか? それは記憶。僕の記憶が確かなら、このアーケードが続く中に模型屋がある。


 とても小さな模型屋。古いキットを捜すには、好条件の場所。


 だから歩くの、手を繋いで。


 僕らが寄るのは、もちろんここ以外にもある。日本橋や恵比寿も然りだ。何故ならアオヤマのプラモデルは基本、合体がメイン。とくに伝説巨人シリーズとなると、全部で九種類もある。アニメでは三つのメカが一つになるのだけど、独特のオリジナリティーに溢れているのがアオヤマのキット。アニメでの合体とは全く異なる、独特な合体……


 奇怪なデザインが多いけど、それが味があって良い。


 想い描くデザイン。


 僕でトキメクのだから、梨花はもっとだと思えるの。


 七歳児までに身体が縮んでいるせいか、とても長い距離。梨花もフーフーと息を吐く程に疲労感。それは僕も同じ。なので「少し休もうか」と声を掛けて路地裏へ……


「もうすぐなんだけどな、まだ歩ける?」と僕は問う、梨花に。すると、梨花はニッコリとして「千佳ちかは大丈夫? 僕なら大丈夫だ」と答えた。その途端だ、シクシクと、


 片隅から? 或いは物陰から聞こえる泣き声。そっとそっと、窺う様子を……



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