第一〇六六回 千佳よりチカチカ冒険団。
――それは、とある土曜日のこと。そう。昼下がりのことだ。
まるで白いレースのカーテンが、スーッと見えるものを覆ったように。例えば、ソフトフォーカスみたいにボンヤリと……景色そのものをオブラートに包んだような感じ……
スヤスヤと心地よく、だけれど不安の陰も感じていた。
光と影に世界。梅田の地下に広がるような世界と酷似。
あくまで雰囲気。僕が見える範囲は胸から下。少しばかり縮んだような感じ。思わず二度見する。えっ? というような疑問符も字幕で表現しながら。明らかに身体が幼くなっているの。ええっと、小柄な方だけど、あまりにも違い過ぎる。まるでまるで去年の夏の暑さが十年に一度と言う気象庁の言葉みたいに、それはもう種類が異なるもの。
とにかく駆け出す……
その行く先も解らぬまま……
せめてせめてせめて、今の僕を映し出すものがあるのなら、確認という意味を込めたものを見たいということ。僕は入った。公衆トイレ。そこにはあるの、鏡がある。
洗面台の高さに違和感。高すぎる。何処まで縮んだのか? 手を洗うことはできそうだけど、縮んだというよりも……幼くなっている。高校生だったはずだけど、まるで小学生で、しかも高学年ではなく低学年? 何歳に見える? 十歳に満たない七歳児。
着ている服も、今のものではなく昔のもの。
だったら今は、令和? 少なくとも昭和ではない。僕は平成生まれだから。しかしながらタイムリープもしているようだ。例えばここが梅田の地下なら、まるで違う。
この間に見た、ドバシカメラの店内の様子とも、階の並びやレイアウトまでも似ても似つかないし、あるべきものもない。店が少なすぎるし、泉の広場が存在している。何よりも決定的な証拠は改札にある。ゲートがないのだ、お顔を認証するためのゲートが。今は通行を体験するためのアプリが存在しているのだ。その範囲は梅田の地下から、大阪メトロの範囲へと広がってきている。それが一式ないということだから、現代ではない……
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