第一〇六四回 一日限定のウメチカ旅情。


 ――それは、節分の日にした約束。


 今日一日だけ、ティムさんは僕のパパに戻るの。



 そして午前の風の中を出発。窓に朝露が輝いたまま走らせる車。あの日と同じ車種。僕がティムさんと出会った日と、同じ車種。ティムさんの隣で語りに語りたいけど、今のことも、懐かしい思い出をも……でも、騒ぐ脳内に、纏まらない言葉たちで、只々沈黙。


 すると、


千佳ちか、まだそのスマホ、使ってるのか?」


「あ、うん」「もうそろそろ変えた方が?」


「ううん、まだまだ大丈夫だよ。ティムさんが僕にプレゼントしてくれたものだから」


 もう五年使っているけど、今も健在。その黄色のスマホは、僕とティムさんを繋いだ必須アイテム。そこから僕の、ターニングポイントとなった必須アイテムだ。


 そして向かう先……


 そここそが、僕とティムさんが出会った場所。梅田の地下……


 ちょうど、ドバシカメラと繋がっている場所。当時、ティムさんはそこに勤めていた。


 今はもう、車を降りて二人、その場所にいる。まだ親子に見える? 多分違うと思う。


 僕はもう、見た目も妊婦さん。


 ティムさんは支えてくれている。僕の身体。九か月になった。来週に病院の予定。春になると、もう産休という形になる。着るものも、ワンピースに統一されてきた。


 今は、今この時を愉しむ……


 毎年恒例のウメチカ戦が行われていた場所。それが地下。地上を超えたなら、プラモデルが飾られている。五階だった。バンプラのコーナーも健在で、梨花りかせつの作品も、飾られている今もまだ。チャンピオンという名、キングキングスの名をしっかりと残して。


 すると、ティムさんが手に取り、バンプラの箱を……


「これ、一緒に作ろう」と言って、早速もレジへ向かって、購入したのだ。



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