第一〇六二回 寒さ凌ぎに背中丸めたら。


 ――炬燵に半纏。


 それに、蜜柑とお茶のコラボがあれば、冬の風物詩は、それらしく描ける。



 それを崩さずに、僕は猫のように丸くなった。すると、太郎たろう君が現れたの。……とはいっても約束はしていた。今日の午後三時に、お家に来てくれる約束。ここはもちろん僕のお部屋。お茶を表成す。早速導く、炬燵の中へ。今必要なのは温もりこそ。


 並んで座るのか、それとも向かい合わせ?


 そう思っているうちに、太郎君は座った。僕のお顔が良く見えるようにと。なら、その答えは当然のように向かい合わせだ。太郎君が、お外から運んできた冷気も、


「ほら、新兵器の活躍だ」


 その名はストーブ。今時珍しい型式のもの。それもその筈、僕が小学二年生の頃から愛用しているストーブ。しかもスチーム付きだ。そこで連想する石油ストーブの上に薬缶を乗せて水蒸気を沸かす方法とよく似たり。僕のストーブは、電気を使ってコンパクト。


「コンパクトなのに、温かいね、これ」


 と、太郎君に褒められた、僕のストーブ。この先も重宝していくから。


 それから今日は執筆できそう。


 実は、この一週間、言葉が、文字が、消えてゆくの……書けない日が殆どだったの。これまでなかったことだから、深刻に悩んでいた。


 だから現れたのかな? 太郎君。……いや、僕が呼んでいた。鬼は外福は内という具合に。だからかな? 夫は奥さんのことを『家内』と言う。皆を元気にする力が宿っているのなら、女の子は生まれながらにして、母親になる素質を持っているのかもしれない。


 それが、母性本能というものと、思える。


 子を育てる術が、本能の中に具わっているとも思える。大人になってゆく過程は、まさにその準備とも言えるような気がしたから。それは僕と太郎君との共同作業。学園で学べないことを、僕ら二人は皆よりも早く……ちょっと早く体験させてもらっているのだ。



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