第一〇五九回 新学期と思えば、もう?


 一月も二十日が経っていた。ボンヤリではなくバタバタしているうちに。



 学園で起きた出来事は、次から次へと前代未聞……


 校長室と職員室の境の場所にあった謎の小部屋が、すっかり雰囲気を変えていた。外観からも目立たない白色の扉が、ピンクに変わっていて、とても違和感を覚えたから。


 表札もあった……

 今まで表示されてなかった、その小部屋の名前が……


 エックス。それがその小部屋の名前。すると、ギィーッと音を立てながら開いた。


 ピンクの扉。僕はビクッとなるも、すぐさまそれは消えた。ほんの一瞬のことだ。


「マリーちゃん」が、お顔を見せたのだから。


「あ、千佳ちかちゃん、寄ってかない?」と、この場でお顔を合わせるのは偶然だけど、僕は寄っていくことにした。今はちょうど中休み。少しだけの時間なら大丈夫ってこと。


 お茶を振る舞った。

 紅茶を頂いた。少しばかりのお嬢様気分を満喫しつつ。


 それはこの室内にあった。ゴージャスともいえる造り。以前の企画室のような、または事務所のような感じとは別物になって、シャンデリアや、テーブルも高級感を感じる、女の子なら憧れるような……小さい頃に欲しかった玩具の、お人形さんのセットみたい。そのシリーズのお家が等身大になったような感じで、思わず「わあー」と声が出ていた。


「ウフフ……気に入ってくれたみたいね」


「とっても素敵。まるで『シャルル・ファミリーのお家』みたいで」


「流石ね。その通りよ。幾つでも女の子なら憧れるお人形さんのシリーズ。私のお部屋にも飾られて、もう一面が一つの町みたいになってるの。千佳ちゃんがファンで良かった」


「ホント! 今度見せて見せて」


「じゃあ今度の土曜日、見せてあげるから。迎えに行くから、お家まで」


 その約束の日が今日。とても待ち遠しかったから。もうすぐ迎えに来られるから。



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