第一〇四八回 スタートダッシュは苦手だけど、でも?


 ――思えば十月の文化祭から早くも一か月。


 まだ遠いと思っていたけど、もう十二月一日になっていたの。しかもしかもしかも。



 真っ白だった。脳内と同じように、ワードの画面も……


 それは梨花りかも同じ。今日は平日だけど、お部屋にいる、二人並んで……


 ピピピ……と鳴る体温計。


「どお?」「……少し高い」


 さっきまで脇に挟まっていた体温計。僕らはお休みした。病院には行った。診察も受けた。風邪、お熱……等のキーワードがあったのなら、その診察も隔離される。座る椅子にも消毒が施されて、質問の数々。検査を受ける……その結果は、風邪だった。


 それらは昨日のこと。二人揃って早退した。

 僕は、梨花がいてくれたから心強かったの。


「ゆっくりやりますか、千佳ちか」と、梨花は笑みを見せた。


「そうだね。何もしなくて気が滅入るなら。少しでも気が紛れるから」と、僕は言

う。


「ほらほら、今回はすごーいことになってる。まだ時間になったばかりなのに、続々とエントリーされてる。僕らもやるよ、短編たち。長編はそらちゃんが頑張ってるね」


「ホントだ。……って、あれれ? 空ちゃんもお休みしてるの?」


「いやいや、きっと部室から。芸術棟にはあるもの、Wi-Fiが。この間、可奈かながしっかりと教えていたから。空ちゃんではなく……陸君りっくんにね」「ふーん」と脳裏に見えた、その時の映像。そのあと陸君が、空ちゃんに教えているという場面も含め、演出はバッチリ。


 可奈は陸君に興味を持っているけど、空ちゃんの応援もしている。

 ちょくちょく写真部にお邪魔しているという噂も。


 この間は、そこにかいが編み物に夢中になっているのを発見したそうだ。その情報の漏洩は思いの外早く、あっという間に瑞希先生の耳にも。それはそれはとても喜ばれる内容ということで、瑞希先生もまた、編み物は大好きなの。なので、描かれる共同作業。海にしてみたらね、編み物仲間が増えて心ウキウキなことだろう。何事もエンジョイが一番。


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