第一〇四三回 学園初の写真部。鉄道模様は今ここに。


 ――そして今度はゆっくり訪れる、学園初の写真部へ。


 その場所は二階。芸術棟の二階だ。アトリエと同じ二階……領土争いなどなく、仲良く使われている。美術部と写真部と仲良く。ここまさに平和の象徴とも言える場所。



 夢のような世界観……


 世界規模から見れば、ほんのちっぽけなものかもしれないけど、戦争など起きない世界がここにはある。夢物語やラノベの世界ではなくて、僕が現実に触れている世界。


 温かな世界は広がっている。


 それらを語る写真たち。全部が全部、現実に起きていることが映し出されている。様々な表情を持つ駅たち。心が和む、広大な風景たち……


 その舞台は北陸本線。そらちゃんがここを訪れる前に綴ってきた、心の歴史……と言っても過言ではない程、映し出されている成長物語。実は、覚えているの。僕が初めて空ちゃんに電話した時のこと。去年の初夏のこと。間違い電話してしまった夜だったの。


 初めて聞いた空ちゃんの声……


 今とは全然違っている。ベールを脱いだ彼女の声。その日、僕は誰に電話しようとしたのだろう? 遠い、遠く離れたお友達へ……だったのだろうか? 写真となって飾られている風景たちは、その道筋を辿っているようだ。片隅よりも片隅に、そこで燻っている記憶。また会おうねと遠い約束が仕込まれているサヨナラの言葉。いつだったか、いつの日だったのか? 大切なのは、誰とそこへ行ったのか? そうなの、もう一人のパパだ。


 ――ティムさんと。


 きっと空ちゃんが歩いた道は、僕も歩んだ道。写真は語り掛ける、その地名は砺波。


 とある民宿のような温泉宿だ。母と娘で切り盛りしていた。その娘は僕と同い年で、初めて会ったにも拘らず色々と、お話しできたの。それはそれは大きな自信となった。僕でも初対面で、お友達になれた。語る語る身の上話、その中で……


「書いてみなよ、千佳ちかちゃんの物語。私、楽しみにしてるから」と、その娘は言った。



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