第一〇四二回 仮装の奥側には、様々なエピソードが。


 ――じっと見る、メイド姿の空ちゃん。じっと見ているのは僕、その視線は隅々と。



 まるで人間スキャナー。今の僕の姿は、学園の制服ではなくて、シンデレラ。仮面舞踏会に馳せ参じた純白ドレスのシンデレラ。……ちょ、ちょっと、絵画と照らし合わせないで。と、心の中の悲鳴。ウフフ……と響く艶やかな笑い声。


「原石を持ってますね。ヌードでもドレス姿でも。格別ですよ、ウメチカさんは」


 と、そらちゃんは耳元で囁く。耳元はやっぱり弱くて、お顔が熱くなるばかりか、少しばかり変な声も出ちゃって……「お菓子、たくさん用意してるから。写真部の展示も見にきてね、ウメチカさん」と言って、空ちゃんはポニーテールを靡かせながら駆けてゆく。


 とても短い距離だけど……


 同じ芸術棟の二階。アトリエから大広間にかけて飾られている絵画や写真。この文化祭の展示を機に、写真部が設立した。部員は一人……


 そしてその部員は初代部長でもあった。それが空ちゃんだった。一人ということもあって今は芸術部の一部門としている。なので、美術部門と写真部門のダブル部長が誕生。


 そして更に、葉月はづきちゃんと空ちゃんは何と同じクラスだ。


 しかしながらついこの間だ。この二人がお友達になったということは。そして二人には共通のお友達がいる。それが戸中となか糸子いとこという子。何でも最近のこと。


 彼女は松近まつちか君と同じ、生徒会の一員となった。部門を立ち上げたのも彼女の力があったから。イコールそれは、松近君の力なのだと思う。思えば、彼は変わった。これまでなら独裁者のような翳りを感じていたのだけど、近頃は、その翳りもスーッと消えたように思える。元々その様が翳りがあったのかは、本人のみぞ知ることなのだけど、変わったように見えるのは、事実のように思える。何処となくだけど、明るくなったような感じだ。


 戸中糸子ちゃんと同じ黒縁眼鏡。四角いフレームも共通している。


 そして二人は、魔法使いのような衣装に身を包んでいる。紺のマント。内側は赤色。帽子もそれらしく、そのモチーフもピンときたの。ヘリ―ポッターだ。



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