第一〇三九回 台場お台場、お次は等身大への道程へと。


 ――続いては、あのバンプラの一分の一スケールが登場する。堂々たる登場だ!



 走るバスの中、梨花りかはもう燥ぎまくり。話題はもうバンプラ一筋で……梨花だけではないの。せつも同じだ。摂もまた梨花と一緒に『バンプラ道』を歩んだ同志ともいえる。


 対して僕は、昨日で胸いっぱいだった。


 天気てんきちゃんも同じ。メルヘンの世界は、その夜も語り合う程だったから。シンデレラの時刻を過ぎても魔法は解けないまま、白雪姫と一緒に夢の中までも、続く物語……


 今もまだ余韻の中、しかしながら、いつしか、世界は融合される。


 僕はいつの間にか、梨花の世界観に紛れ込んでいた。興味は……あるの。やはり僕は最も近い距離にいるから、双子という距離の梨花と。でも、この二人だけではないの。


 皆が皆、何かしら興味を持っている。


 修学旅行という大イベントの一コーナーだから。


 学園もまた試行錯誤した末のコースだったのだろう。しかしながら、どれも定番から外れた内容……それができるのは、きっと先生方だけのアイディアではないと思うの。


 広がるお空で繋がる向こう。


 生徒会を支えている、その裏にある組織の面々たち。


 これでも、細やかなプレゼントのつもりなのだろう。ありがとうという外はなし。その思いに耽るのも束の間、戻る今ある景色の中へ。梨花の声が近づいて、


千佳ちか、もうすぐだよ。『こいつ、動くぞ』ってとこ、一緒に観よう」

 と、確実に僕を誘っていた。


「うん、前から楽しみにしてたもんね、梨花」


 と、言葉を交わしたところから、生まれる躍動感。新しい風を感じた瞬間。ちょうど重なる、梨花と摂が先客三十名を競うバンプラのスタンプラリーに挑戦した日のことを。とても楽しかった一日。お台場の等身大のバンプラは、まさにそのモデルなのだ。『MS81・マンダム』原点にして頂点のような機体で、今あるバンプラの原点なのだから。



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