第一〇三七回 今日は十月二十一日。御伽の国でコラボ。


 ――落ちたスノーボールの正体は、梨花りかの拳骨だった。「痛―い」と、お約束の悲鳴。



 そして両手で頭を押さえ、涙目で梨花を見ると、


「ほらほら、もうすぐじゃない。千佳ちかが『行きたーい』って言ってたとこ」


 と、梨花は笑顔の中の笑顔……


 トンネル抜けたら、そこはもう御伽の国だ。ハヤオワールドが広がる、アトラクションが満載のエブリアニメの世界……胸いっぱいになる、その光景を見た途端。


「本当に来ちゃった」


 と、その言葉が漸く出るくらいに鳥肌もの。地理的には何処? 何県? そのような質問をしていた、自身に。ならば、ここはもう関東。だとすれば、この後に行く所は、お台場なのだろうか? そこには何と……等身大のバンプラが存在するのだよ。


 その時こそ梨花が、


「本当に来ちゃった」


 と、その言葉を言う番だ。噂によれば、そこもコースに入っている。今から目に浮かぶの、梨花が今の僕と同じように燥ぐ光景。この時点でこうだから、語彙力も崩壊で……


 すると、ギュッと手を繋いで、


「さあ行こ、千佳」


 と、声を掛けたのは……って、梨花ではなくて、何と天気てんきちゃんだった。


「あなたとは悉く趣味が合ってるね。そして今日は、私の誕生日だからね」


 との台詞に続いた。バスが到着し、駆け出したいところだと思うのだけれど、そこは弾む笑みの中で「ゆっくりで大丈夫だから」と、僕の歩調に、天気ちゃんが合してくれた。


 そして皆も、


「さあ、盛大に誕生日祝いだよ、天気ちゃん」


 と、梨花に続いて皆が皆、この十月二十一日を、笑顔を満開に飾ってくれたのだ。手を取り合う世界へ、まるで白雪姫とシンデレラが物語の続きを綴るようにと。



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