第一〇三六回 トンネル抜けて繰り出した時、そこはね。
――バスは、もう走っていた。今はもうトンネルの中。オブラートに包む光と影。
学園からは、どれくらい離れたのだろう? その感覚もぼやける時間の流れ。まるで無重力。宇宙空間を思わせる身も心も……そこでお話は再会された。さっきの続きだ。
「
「そうだった。覚えてる。あの頃はまだ」「お喋りもしてなかった」
「お互い名字だった。
いじめが表面化していた。
――その時だ。光が差し込んだ。
この車内のあらゆる窓から。光は包んだ。バスそのものを。トンネルは抜けたの。昔の思い出と同じくらいの長さで。或いは一瞬。瞬く間の出来事。前に進む時との道標。
「どお? サバゲー。℮スポーツもいいけど、気分転換」
と、美千留は笑みを浮かべて訊く。因みに今、言うまでもなく座席は隣同士なの。
「う~ん、そうだね。やっと感覚が掴めたかな。美千留が色々教えてくれたから。ここでは美千留が先輩かな。……それにしても、もの凄い強豪の集まりだね。とくに……」
「そうそう、あのエージェントの二人組。まだ始まったばかりで優勝候補だし。でも負けないよ、僕ら『チカノサバゲー』は。ウメチカ戦でキングキングスの名に懸けても」
「それに、あの子を救うためにもね。……でもさ、そのネーミング。いかにもあなたらしいね。梨花といい、あなたといい、ホント、ネーミングセンスまで似てるしね」
「ま、まあ、あの姉にして、この妹ありだから」と、言った途端だ。ギラリと光る視線を感じたの、背後から。それにまだ早いの。頭の上にスノーボールが落ちるのは。
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