第一〇二八回 七不思議を上回るものは。


 ――言わずと知れた学園の七不思議。


 でも、ホントは言うと、予想を遥かに上回っているそうなの。



 僕ら四人と合流したそらちゃんと椎名しいな君は、その様に言っていた。しかも、椎名君はポーカーフェイスのまま、口調も変わらずに。すると、可奈かなの行動に変化が……


 いや、変化という表現よりも、異変という表現でも差支えはなさそうで、不敵な笑みを浮かべるまでに至った。学園の案内は校舎内から普通に、並んで歩く行進のように行っていたけれど、急変するの……「見せてあげる、この学園の七不思議というものを」


 そう可奈は囁くように告げた。そこから始まったのだ。


 学園内のミステリーツアーが。さて、本格的になる可奈のマシンガントーク。その餌食になる……あ、いやいや、ターゲットとなる者は、空ちゃんではなく椎名君の方。


「君はどう思うの? 学園に七不思議ってあると思う?」


 と、いきなりの議題をぶつける。椎名君は……もう陸君りっくんでいいか、思えば海陸空……面白い程に集ったようだし、この学園に。僕と同じ学級のかい。そして一学年下の空ちゃんと陸君。二人は同じクラス。先程、教室の前を通過した。僕らの一つ下の階にある。


「いいや、七不思議どころではないよ。もっと目を凝らせば、見えてくるでしょ。ほらほら十三の迷宮へ繋がる道程がね。……そこが、僕らの世界なんだ」と言いながら、


 ……遠い目をする陸君。


 すると、どうだろう? 景色が変わる。夕陽に染まる頃から、薄っすらと一番星が見えた。ポーカーフェイスだった陸君に、ほんのり笑みが浮かんだ。そして言う……


「もっと上へ行こう。もっと神秘の世界へ」と、駆け出す陸君。


「あ、こら、待ちなさい君。それに勝手に上がっちゃダメなんだよ、屋上……」

 と、可奈が制止しようとするも、まったく聞こえてない様子。そして可奈は、


千佳ちか、私たちは先行くけど、太郎君と一緒にゆっくりおいで」と、気遣ってくれた。


「うん……」と、返事をする。階段の途中、皆の背を見送った。ここはまだ二階なの。



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