第一〇二五回 セーヌ川のような季節感。


 ――連想するのは、まるで革命。



 何処から湧き出たのか? そんな予感が脳裏の奥深い所で過った。


 それはきっと……

 彼のお顔を見ていると。もっと掘り下げるのなら、彼の目を見ていたら……


 今この場で、ここは職員室と校長室の境の場所で、そのドアの前の廊下で、僕らはバッタリ出会った。そらちゃんと、その横にいる……イケメンで可愛らしい男の子のことだ。


 そのポーカーフェイスは、誰かを連想させる。


 例えば、そのドアの向こうにいる松近まつちか君のような、そんな類の……いつの間にか吸い込まれるような瞳。目は口程に物を言う? それさえも覆すというのか、それさえも通用しない程の、常識を超えたものというのか、僕の脳内では整理できない程のインパクト。


 そう感じた時だ……


「あなたがウメチカさんですね。空が応援してましたよ。これからも良いお話、綴って下さいね。そう、これからですから……」と、謎めいた言葉を残し、立ち去ろうとした、まさにその時だ。こだまする声は「ちょっと待ちなさい!」と、ヒーローらしくも……


 まるでヒーローのような声で、或いはヒーローのような風格の、ヒーローの娘なの。


 藤岡ふじおか可奈かなが、僕の前に出たのだ。僕に背を向けつつも、空ちゃんたちとは向かい合わせで、まるで対峙しているような、そんな構図だ。


「空ちゃんは兎も角、あなたは? まだ名乗ってないわよね?」


「君は誰だ?」と、空ちゃんの横の男子は言う。すると、可奈の顔が歪む……「君ですって? その恰好からすれば、あなたたちは下級生ね。私たちの方が先輩ってこと。どの様な言葉を使うか、わかるわよね? 私は藤岡可奈。あなたは? 私は名乗ったわよ?」


 そこに生まれる、少しばかりの静寂。


 だけれど、すぐさま、迅速な対応でざわめきを取り戻す風景。


椎名しいなりく。この学園からこの名前になった男だ」と、高音ボイスでもカッコよかった。



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