第一〇一八回 いつかのプラネタリウム。


 ――この日、僕ら三人が毎年恒例としていたプラネタリウムが閉館した。



 令和五年八月二十日……


 事後のこととなるスマホでの情報。自然と、僕らはその場に集っていた。脳内を駆け巡る想い出たち。僕ら三人、其々の想い出に。梨花りかは、毎回よく眠っていたけど……


「本当なんだね」


 と、声にする程。立ち尽くし、そこから動けずに、開くことのない開館……その建物を見ていた。見続けることで、何一つ状況は変わりはしないのに。それを承知で……


「夏休みの最終日に、この三人で観ようって、去年、ここで約束し合ったのに……」

 と、可奈かなは言う。


 このプラネタリウムに行こうと、最初に言ったのは可奈。それ故にプラネタリウム愛は深く、一番ショックを受けていたと思う。泣くよりも、それ以上に放心状態。見ているのも辛く……その日は、そのまま家路へと。三人が、三人並んで。


 その途中で浮かぶ……


 初めて三人で行った日のこと。その日、お家の鍵をなくした……と、思い込んだ日だった。凍えるような冬の日。まだ僕と梨花が、お互いが双子と知る前のこと。この『ウメチカ』も、まだ誕生していない日のことだ。鍵の開かない誰もいないお家の前で、僕が寒さに耐えながら、お母さんの帰りを待っていると、梨花が現れて、


「だったら、僕も一緒に待つ」と言って、僕の横で一緒に……離れてくれなくて。


 そうこうしているうちに、可奈が現れ、――「あんたらバカ? そんなにガチガチに震えて。ったく何やってんのよ、さっさと行くよ」と、僕らを連れて行ったその先。


 想い出は導いたの。僕の中で、……それは『赤い狐と緑の狸』


 なら、今度は僕の番。それは、颯爽たる行動に……


「可奈、梨花も。ざるそば、一緒に食べに行こっ。レッツ、家族亭へ」


 と、今度は僕が、可奈と梨花を案内する。冬の定番から夏の定番の食べ物へと。



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