第一〇一六回 これから、ずっと。


 ――永遠とわの十五歳。その姿のまま、旧一もとかずおじちゃんは今、僕の目の前にいる。



 でも、僕の傍にいる梨花には見えてない。


 けど、感じてくれているの。僕の言葉や仕草から……僕の独り言と思わないのが、梨花りかの優しさ。まるで我がことのように、その一部始終を見守っていると解釈しても、その何万倍も御釣りがくる程……だから、だから今は、旧一おじちゃんだけを見るの。


 白く……


 今にも消えそうだけど……


千佳ちか、そんなに泣かないで』


「だって……」


『きっと千佳には、僕が消えそうに見えてると思うけど、これはお別れじゃないんだ。確かに今見えてる僕の姿は、もう消えるけど、僕はずっと、千佳の傍にいるから』


「僕の傍に?」


『そうだよ。もう千佳の中に僕はいる。中だけに、お腹の中だけど』


「僕の赤ちゃん?」


『そう。見守ってあげれられるようにって。だから双子。僕の時間は、未来へ繋がったんだから、ここは涙じゃなく笑顔の場面だから、そうだろ、ママ……』


「うん、ありがと。今まで見守ってくれて」


 ――そう。笑顔の場面だね。


 旧一おじちゃんは、やっと未来へ向かえるのだから……


「今度は僕が見守る番。何も心配いらないくらい、ママは・・・強くなるからね」


 涙を拭く、雫は残っても笑顔で。


『千佳、ありがと……』


 光が差し込む、お空の灰色を切り裂くように。旧一おじちゃんは最後に笑顔を残した。


 そして……「ほら、綺麗な虹だね」と、梨花と見る風景には、もう嵐は去っていたの。



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