新・第二章 八月の定番と呼ばれ。

第一〇一一回 葉月のアトリエへ。


 ――まだ始まったばかりと思っていたら、もう半ばに差し掛かる八月も。



 葉月はづきちゃんも、いよいよキャンバスを設置。そこから急展開を遂げることに。もうアクリル絵の具で色付けを行っている。それに合わしたかのように、全裸になっていた。


 今も健在なスタイル……

 このアトリエには、僕と葉月ちゃんの二人きり。


 僕もヌードになっていた。テーマは『誕生』だから、赤裸々に描いてもらう。どの様な偶然か解らないけど、これから誕生するお腹の中の子たちを祝福する作品となるの。


 僕はこの場で二回、ヌードになった。


 初めは令子れいこ先生の作品。……十三歳の時の、梨花りかと一緒の『天使のうたたね』

 今は葉月ちゃんの作品。……十七歳の、お腹の中の子たちと共に『……誕生』


 思えば一人じゃなかったね、モデルは。


 だから最後まで頑張る。そしてこのアトリエも、とても優しい設定。まずは温度設定に始まる。実は自動なのだ。ヌードになることを想定した室温。真夏も真冬も関係なく合わしてくれる空調。それからお外にいるような感覚のスケルトンな天井と側面。マジックミラーの役割だけではなく紫外線も……UVカットの役割も担っている。


 つまりは日傘? 或いはでっかいサングラスとも?


 少しばかり窓をオープンすれば日光浴も。そして階段を下りたのなら、御池も。今のサウナブームにも対応できる、露天風呂の役割も兼ねている。人工的な御池だった。


 この芸術棟には、整える要因が沢山ある。


「一番のリラックスでお願いしますね、千佳ちか先輩」


「葉月ちゃんも。伸び伸びと描いてね、思うがままに」


 切磋琢磨の言葉。描く方も描かれる方も。座りポーズとなった。ごく自然に……お腹の具合も、やはり膨らんできているのがわかる。手を添えると、動いているのがわかる。その様な気がしただけで、まだ早いのかもしれないけど、ママになる成長過程とも……



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