第一〇〇五回 可奈を筆頭に出発。


 ――そう。突然現れ、何故かこの場を仕切っている人物。それが可奈かなだ。



 彼女についてくるのは、ここに集まった女子全員。名前を挙げると梨花りか千佳ちか……一応は僕だけど名前で。葉月はづき美千留みちる天気てんき、そしてしょうさん。この六人を引き連れて……


 それでもって、行き先はというと、さっき翔さんが行こうと言っていた喫茶店。


 その道案内は、結局は翔さん。


 可奈は便乗しているだけだけれど、結構偉そうに物を言う。何故にそこまで仕切ろうとするのか? それは可奈だから? いいえ、僕を安心させるためだった。彼女は知っていたのだ。今日の僕の行動を……梨花を通して。なら、梨花が黒幕……ではなくて、きっと僕のことで、皆に助けを求めていたのだろう。なら、辻褄が合う。偶然のように見せた必然。すると、梨花は「わかっちゃったみたいだね」と囁くように言った。


 僕は……

 そんな梨花の優しさが照れくさくと思うも、でも、心から、


「ありがと」

 と、その一言に尽きる。それにしても……


「初めてだね、女子が集まってお出掛けするの」


「そうだったね、いつもは可奈と三人だったね」


「そんだけ学園生活が楽しかったんだね、お友達も増えて、夢みたいで……」


 笑っていられなくなりそうで、泣けてきそうな感じがして、そんな時なの。


「これからも楽しくなるよ、千佳先輩」

 と、葉月ちゃんの声が、脳内を支配する程に響いた。


「お願いしたいことがあるって、言いましたよね? この夏休み、千佳先輩が大変なのは重々承知していますが、僕に預けてほしいんです。きっと素敵な思い出にしますから」


 梨花はウンウンと頷く。


 葉月ちゃんの目力は、その決意のほどを物語っていた。



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