第一〇〇四回 急展開な女子会へ。


 ――音のないスマホ。どうやらマナーモードにしていたらしい。それは、誰の?



 怜央れお君だった。今はまだ展示会場の建物の中。正確には四階から五階の間の踊り場に身を置いていたの。原因は僕……大丈夫と思っていたのだけど、洗面所のお世話に。女子トイレの中には梨花りかしょうさん。それに美千留みちるが付き添ってくれて……


千佳ちか、あなたついに……」


「ちょ、ちょっと早かったけどね、後悔はないよ……」


 と、多分だけど酷い顔になっていると思う。察しの通りだけど、美千留は知ってしまったの。う~ん、美千留だけではなくて皆にも。特に美千留は、まだ太郎たろう君に好意を持っているから、この僕の有様を受け入れたくないとは思うけれど、それでもね、


「後悔してるなんて言ったら、許さないから。それに生まれてくる赤ちゃんを粗末になんかしたら、孫の代まで祟ってやるんだからね。千佳に文句をいう奴らは、たとえ親や学園を敵に回しても、私がやっつけてやる。あなたたちを守るからね」


 ……と、ガバッと僕の身を抱いて言ってくれた。僕は込み上げてくる涙を……


「学園、行ってもいいの?」「当たり前でしょ。私たち、お友達で仲間じゃない。千佳のお腹が大きくなっても、堂々としたらいいのよ。私たち皆が、あなたの味方だから」


 意外だったの。美千留の口から、その言葉が出たことが……


 すると翔さんが、


「こいつもこう言ってることだから、これからどうだ? ちょうど女ばかりが集まってるようだから、女子会でも開いてみるか。この近くに、お洒落な喫茶店があったから」


 と、これもまた意外な一言。……あ、でも、怜央君がいるし……と思っていたら、


「怜央君なら急用ができたって。太郎さんから連絡が入ったからって、そっちの方に出発したから」と、葉月はづきちゃんが満面な笑顔で、僕を迎えてくれた。そして更に……


可奈かな?」がいたのだ。目の前に。


「ちょっとあなたたち、私には? お誘いも何もなかったんだけど」と、プンプンと。



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