第九九九回 999は、銀河鉄道の夜へ誘った。


 ――あの伝説の蒸気機関車。君と一緒に、僕は乗った。



 手を取り合いながら、未知なる冒険の旅へと躍り出た。


 車窓から見える景色は、輝くお星様や、途切れることのない流星群。その中にチラチラと、レッドコメット専用機の姿も見かけたような、現実を越えた銀河鉄道の夜へ……


 因みに、レールは既に途切れ、そこからは自由な空間。

 天へ向かって、今はもう無重力が特徴の広大な世界観。


 何処へ向かうのか? それは、車窓さんが知っている。僕らの想像を遥かに超えた内容だから。つい昨日までの旅とは、まったくもって種類は異なる。国内旅行のつもりだったけれど、世界を飛び越えて、ここは大宇宙。いきなりのビッグスケールとなった……



 旅は人生に似ていると、誰か言っていた。


 銀河鉄道の旅の終わりには、青春の幻影と、マーテルさんが言っていた。その映画が公開された当時は、僕らは姿形もなく、まだ生まれていなかった。きっと、僕らのお母さん世代のお話となりそうだ。するとどうだろう? 高速道路のように何処までも続く単調な道程と思いきや、見所満載だ。地球温暖化が進行する中で、第二の地球を捜すことも未来にはありそうだけれど……銀河鉄道の物語での未来は、まさに今を指しているの……


 これから生まれる子供たちのためにも、

 住み良い環境を与えてあげたいと強く思う。僕らは願っているの。



 未来について思想を重ねること、そして語り合うことも、この車両の座席で向かい合う僕と太郎たろう君の課題となっていたの。感じる新たなる生命の息吹……感じる鼓動も。


 青春の幻影だけには留まらずに、僕らの場合は未来へ繋いでゆく。999スリーナインを司る星野ほしのという名字には、偶然かもしれないけれど、僕も同じ星野で感じる親近感。その中で、僕のお腹の中で動いているもの、それは間違いなく新たに始まる、新たなる人生なの。


 どれくらいの時が流れたのだろう?


 押し上げるような、躍動感に至るまで。押さえる口元、駆け出す洗面所まで。間違いなくその証拠が現れた。後から駆け付けてきた、君……どう、告げたらいいのだろう?


「できちゃった……」


 その一言が、精一杯の領域。未知なる世界へ、突入する瞬間だ。



 ……少しばかり、沈黙は続く。お互いが見詰め合いながら……


「おめでとう。正直に言ってくれて、ありがとう千佳ちか


「でも、まだ早すぎるよね? 結婚だってまだだから」


 すると、太郎君はお顔を横に振って、フワッと、まるでバスタオルで包み込むように抱きしめて、僕の身体を……そして囁くように「大したことないさ。俺の覚悟の前にはな」


 ソフトな口調の裏側に、ズッシリとした太郎君の想い。涙が溢れるも、それをも包み込むような、その一言の重み。身体に伝わる、芯から温まるような感覚で。



 車両の名前は、999と名乗る蒸気機関車。特徴は、お空高く走ってゆき、大宇宙の旅を満喫させてくれる。まるで青春18きっぷのような想い出を残してくれる。


 ただ、この度の銀河鉄道の夜は、


 幻想を越えた現実となって、僕らに大いなる課題と、その裏側では大いなるサプライズを与えてくれた。僕は宿した、新たなる生命。そしてあの日に見た夢は、梨花りかの言う通りに、やはり正夢となりつつあるの。僕は待ち遠しくなる、お腹の子が元気に生まれてくる日のこと。このウメチカの物語は、母と子のお話から始まったのだけど……


 僕自身が、ママになる。


 次回、遂に千回となる僕のエッセイ。そこに映るのは、僕らの未来となる。


 この度の旅行は、僕らにとって本当の意味での新婚旅行ハネムーンとなった。銀河鉄道の夜が明けたのなら、課題が多くとも明るい未来となる。僕は不思議とそう思えたの、この瞬間に。



 旅の終わりに、日常に戻ったのなら、

「おめでたです」との歓喜なる意思のお言葉。訪れた産婦人科での一コマだ。


 付き添ってくれたのは、お母さんで、

「千佳、この子たちのいいママになるんだよ」と、励ましてくれた。



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